• FUKUOKA BEAT REVOLUTION

特別な日の特別なライブ――鮎川誠 74thバースディ記念ライブ2022 5月2日シーナ&ロケッツ

更新日:5月11日


Photo by 西岡浩記 


配信で見ることになったが、暗転した会場にロケット発火のカウントダウン、そして発射音とともに明かりが点り、ステージに登場した鮎川が実に嬉しそうな顔をしている。ライブを日常にする彼らにとって、すべてが特別な日であることに変わりないが、この日だけは特別な日の特別なライブかもしれない。ステージに鮎川誠(Vo、G)、奈良敏博(B)、川嶋一秀(Dr)という3人が揃い、「バットマン」や「ホラフキイナズマ」など、お馴染みのナンバーを演奏し始めるところはいつもと変わらないが、“今日は大好きな曲をいっぱいやります。『ROKKET SIZE』から1曲やります”と、同作から「ゲリロン・ベィブ」(同作からは「ブラック・スネーク」も選曲された」を演奏、また、LUCY MIRROR(Vo)が「スイート・インスピレーション」から加わって「ハッピー・ハウス」や「ボントンルーレ」などに続いて、“めったに出番のない曲です”と、鮎川が言い、「恋のダンス天国」を演奏するところなど、特別な日の特別なメニューが観客へ提供される。まさに“誕生日仕様”(!?)と言っていいだろう。



“第1部”(実際にインターバルが設けられ、1部、2部と分かれている訳ではないが、前半と後半ではメニューががらりと変わる!)の締めとでもいうべき、「レイジー・クレイジー・ブルース」、「レモンティー」、「ユー・メイ・ドリーム」という“3連チャン”は、シーナ&ロケッツを代表する珠玉のナンバーの固め打ち、これぞ、シーナ&ロケッツというステージを完膚なきまでに見せてくれた。


“誕生日仕様”は“第1部”だけではない、“第2部”にも特別なメニューが用意されている。鮎川誠と奈良敏博に坂田“鬼平”紳一(Dr、Vo)が加わる。いうまでもなく、サンハウス・レコード・デビュー時のメンバーである。鮎川はSONHOUSEではなく、3(THREE)HOUSE(3人のSONHOUSE)と、冗談めかして言っていたが、そのプロジェクト、もしくはバンド名は“PLAY the SONHOUSE”と名付けられている。その名の通り、サンハウスの3人がサンハウスのナンバーを演奏する。

実は“PLAY the SONHOUSE”はこの4月24日(日)に東京・南青山「RED SHOWES」で開催された『大江戸“鬼虎”祭~松永浩還暦&船越祥一誕生日編~』でも実現している。その模様はシーナ&ロケッツの公式YouTubeチャンネルでも公開された。

同ライブは基本的に告知もあまりせず、ほとんどクローズドなパーティだったため、その場に立ち合えたものは限られたものだけ。鮎川は“この間、久しぶりに東京でやって、それをもう一回、皆に聞いてもらいたくて”という。鮎川は“PLAY the SONHOUSE”をもっと多くの方に聞いてもらうため、坂田に改めて声をかけた。実は坂田からも1曲でもいいから、バースデイライブに参加したいと、鮎川が声をかける前にマネージャーに連絡をいれていた。思いは同じだったということだろう。当然、奈良に断る理由はない。直前だったが、3人は“PLAY the SONHOUSE”をすることを決定したのだ。

ステージには3人とともに「RED SHOWES」で開催された『大江戸“鬼虎”祭』の時と同様、福岡在住のギタリスト、エンジニアの松永浩がサポートに入る。松永は福岡のレコーディングスタジオ「HEART STRINGS STUDIO」のオーナー。同スタジオではサンハウスの『HAKATA』(2015年リリース。レコードデビュー40周年記念盤)がレコーディングされている。また、シーナと鮎川誠の自伝的ドラマ『You May Dream』(NHK福岡ドラマ)で鮎川誠役を演じた福山翔大にギター演奏を指導。「山善&鬼平バンド」、「花井善平」(花田裕之+穴井仁吉+山部“YAMAZEN”善次郎+坂田”鬼平”伸一)など、サポートでギターを弾いている。そもそも3月に福岡で行われた「穴山淳吉」(下山淳+穴井仁吉)の『SPRING HAS COME TOUR.』も彼の還暦を祝うことがその契機だった。

鮎川は“セカンドアルバム『仁輪加』(1976年)に入っている「爆弾」です”とアナウンスすると、いきなり3人(+1人)のSONHOUSEが咆哮を上げる。その太くて重い、ダークでブルーな音に気圧される。鮎川のギターもいつものブラックのギブソンレスポールではなく、ゴールドのギブソンレスポールシグネイチャーである。その音はサンハウスが飛び切りのブルースバンドであることを再確認させる。続いて、同じく『仁輪加』収録の「おいら今まで」でギターがうねりを上げる。重心の低い坂田のドラムがボトムをしっかり支える。再び、レスポールに替え、デビュー・アルバム『有頂天』(1975年)に収録された「風を吹け」をぶちかます。同曲を“47年前の曲”と紹介し、鮎川、奈良、坂田、そして柴山“菊”俊之(Vo)の4人で作った、一番新しいアルバムという『ストリートノイズ』(未発表曲集。1980年にリリース)に収録の「悲しき恋の赤信号」を畳みかける。鮎川のメロウなギターが咽び泣き、素敵な雑音が会場に降り注ぐ。再び、同作から鮎川が“俺の大好きな鬼平のドラムがいっぱい、いっぱい同じところで出てくるから、聞き逃さないでください。それが本当に痺れます。”と言う「傷あとのロックンロール」を披露。鮎川の言う通り、坂田のドラムの聞きどころ、満載である。

“1974年に郡山で日本初の大規模なロックフェス(“郡山ワンステップロックフェスティバル”)が行われ、その頃にデビューした曲、だけどLPには入っていない”「ねずみ小僧の唄」を鬼平が歌うと、鮎川が告げる。鬼平の歌は粗削りで野性味溢れるが、たまらなく、チャーミングである。同曲を終えると、鮎川は“サンハウスの歌をいっぱいやれて、聞いてくれて嬉しいです”と、語り、4人で歌うことを告げ、「ふるさとのない人たち」(『仁輪加』収録)が披露される。ブルースマナーを守りながらも軽快なナンバーはサンハウスの歌バンドとしての魅力を再確認させる……と、詳述していたらきりがないが、さらに「ぬすっと」(『STREET NOISE』収録)、「なまずの唄」(『有頂天』収録)が演奏され、その音は濁流のように観客に襲いかかる。観客は激流の川や深い沼のようなサンハウスのブルースの世界へ放り込まれる。「なまずの唄」を歌い終えると、鮎川は同曲は“シーナ&ロケッツでもお馴染みだし、ロンドンではウィルコ・ジョンソンともレコーディングしているが、今日はオリジナルで演奏した”と嬉しそうに告げる。



そして、“あまりに最高な気分なので、LUCYを呼び出し、彼女にも歌ってもらう”と言うと、LUCYが再び、ステージに現れる。鮎川は”「ブルースの気分」、サンハウスの時は「僕にもブルースが唄える」(サンハウス初期のプライベート録音集『HouseRECORDED』に収録)”というタイトルだったと解説する。ドラムとベース、ギターが軽快なリズムを刻み、LUCYが軽やかに歌う。松永のソロもフィーチャーされる。続けて「もしも」(ライブアルバム『DRIVE』収録。鮎川と柴山のオリジナル)が演奏される。こんな時代にも関わらず、跳ねるようなリズムが心と身体と軽くしてくれる。

同曲を歌い終えると“また、いつか、やりたい”と告げ、“死ぬまでロック!”と照れ臭そうに叫ぶ。そして、“お別れの曲です。サンハウスの『仁輪加』というセカンドアルバムから「やらないか」!”と、告げ、同曲が演奏される。重戦車のような重たく、抉るようなビートを観客に叩きつける。観客は爆音を浴び、法悦境へと誘われる。本当の爆撃などいらないが、こんな音の爆撃なら人を幸せにする。弾圧や抑圧が溢れるブルーな世の中を解放へ導く。同曲を歌い終えると、鮎川はメンバーと観客へ感謝を告げる。



ステージにはバースデーケーキが登場するとともにバースディソングが歌われる。ケーキを持ってきたのは鮎川の孫娘だという。シーナから繋がるファミリーヒストリーを見るかのようだ(ちなみに実の娘でシーナ&ロケッツのマネージャーを務めている方のお嬢様になる)。ステージの彼女の後ろには穴井仁吉や川嶋一秀、延原達治などが続く。鮎川は彼らに声をかけ、観客にも紹介する。

鮎川は“本当に今日は、自分達だけで楽しんで…楽しんでいただけたでしょうか”と、問いかける。観客は拍手とマスク越しの歓声で応える。”僕の74の誕生日だけど、関係ねえ。ロックは生だぜ、やり続けたいと思います。また、一緒に楽しめる時は、また、会いましょう。本当にありがとう”と伝える。同時にメッセンジャーやFBにはたくさんバースデイメッセージがきているらしく、”返事しきらんくらい、たくさん来たので、ここでいいときます。ありがとう”と言いきる。鮎川、奈良、川嶋、LUCYというシーナ&ロケッツの4人で、アンコールとして「I LOVE YOU」を演奏することを告げる。その歌には観客やメンバー、家族、スタッフなどへのたくさんの感謝と深い愛が込められているのだ。

この日のステージは約3時間、全30曲。鮎川はずっとフロントに立ち続けた。こんな74歳は、そうはいない。彼こそ、その場にい続ける資格と体力と技術と意志を持つ、選ばれしアーティストではないだろうか。


シーナ&ロケッツは44年前、1978年10月25日に「涙のハイウェイ」でデビューしている。この日、鮎川は“一番好きなこと、最初にやりたかったことをずっとやっている”と、そして、“悩んだ時、迷った時はシーナがいつもがんばれと背中を押してくれた”と44年と74年を振り返る。

“やりたいことをやる”――簡単そうに見えて、一番難しいことに挑み続ける。決して妥協や迎合はしない。ロックの衝動を自らのロックとして体現。常にシーナ&ロケッツのあるべきサウンドやメッセージを求め、ピュアなロックンロールを発信してきた。 まだ、ポール・マッカートニー(79歳)もミック・ジャガー(78歳)、キース・リチャーズ(78歳)がいる。彼らは今年、大きなイベントに出演するとともにワールドツアーも行うことが予定されている。勿論、レイ・デイヴィス(77歳)もピート・タウンゼント(76歳)もウィルコ・ジョンソン(74歳)もいる。鮎川だって、負けてられないだろう。毎年、鮎川誠の誕生日を祝える、こんな嬉しいことはない。

なお、本公演は当初、5月5日(木)23:59までアーカイブ視聴可能だったが、好評につき、配信期間の延長が決定! 5月15日(日)23:00まで見逃し配信中。是非、見ていただきたい。 配信チケットは以下になる。 http://teket.jp/218/12025

また、セットリスト、ライブの予定はシーナ&ロケッツの公式サイトをご参考いただきたい。 http://rokkets.com/setlist.htm http://rokkets.com/nextlive.html



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