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  • FUKUOKA BEAT REVOLUTION

齢60にして今は通過点、到達点はこれからー“脇に主に変幻自在の千両役者”澄田健「HAPPYBIRTHDAY LIVE PARTY ~癸卯KANREKI~ 」



■12×5×2  兎たちの60祭 PART Ⅱ


延原達治「“DRIVE TO 60’S” -Tatsuji Nobuhara 60th B.D.special –」が2023年10月26日(木)に荻窪「TOP BEAT CLUB」で開催されてから1か月後、同年11月26日(日)に下北沢「CLUB Que」で澄田健「HAPPYBIRTHDAY LIVE PARTY ~癸卯KANREKI~ 」が開催された。イベントタイトルにある“癸卯”は「みずのとう」と読み、干支の一つ。西暦年を60で割って43が余る年が癸卯の年となり、2023年がそれに該当するそうだ。十干と十二支を組み合わせた60を周期とする数詞。陰陽五行説とも結び付いて様々な卜占にも応用されるという。うさぎのように跳ね上がるという意味もあり、卯年は何かを開始するのに縁起がよく、好転するよい年になると言われている。



改めて澄田健(読みは「すみだ・たけし」、鮎川さんはよく言い間違えていたが、「すみだ・けん」ではない!)を紹介しておく。1963年11月26日生まれ。広島県呉市出身。


高校時代にYAMAHAのコンテストに出場、YMOのカバーをしている。上京後、大学時代はあまりバンドはやってなかったそうだ。大学卒業後、バックバンドなどの仕事をしていたが、そこで知り合った鈴木正美(De+LAX)に“澄田はバンドをやらないと!”と言われ、始めたのが「GYM」。『サンチェーン・ミュージック・バトルロイヤル』(通称“S・M・B”。“「ローソン」のルーツ”と言われるコンビニエンスストア「サンチェーン」が主催。1986年から89年まで開催。同コンテストからはALI PROJECT、JAG-TOY、岩田麻里などがメジャーデビューしている)というコンテストで入賞、審査員のサエキけんぞうにメダルをかけて貰った記憶があるという。GYMはオムニバスアルバム『WILD DRAW FIVE』(1990年、東芝EMIからリリースされた)に参加、同作には2曲収録されている(GYMの他にはばちかぶり、きどりっこなどが参加している)。その後、Kyo&イル・モストロ(1996年)、鈴木正美が結成したBlue Caddillac Orchestraに元ブルーハーツの梶原徹也(Dr)、PERSONZ、De+LAXの本田毅(G)、岡本雅彦(B)ととともに参加。その前後には村上龍が監督・脚本した映画『トパーズ 』(1992年)で女王様役を演じた俳優、天野小夜子のバンドにも参加している。



1994年、宙也、斎藤律とともにLOOPUS結成(2003年に脱退)、メジャーデビューを飾る。1999年に元アンジーの水戸華之介と活動を開始、翌2000年に水戸華之介&3-10chain(元プリンセスプリンセスの中山加奈子、筋肉少女帯の内田雄一郎も参加していた)としてデビューアルバム『ADRENALIN』をリリース。佐久間学バンドに参加。中山加奈子が1999年に結成したVooDoo Hawaiiansに参加(同バンドには2002年から2003年まで穴井仁吉も参加していた)。2005年に穴井仁吉などとMOTO-PSYCHO R&R SERVICEを結成。サンハウスの柴山“菊”俊之が2002年に結成したZi:LiE-YAに参加(2005年1月脱退)。2014年、松尾清憲と一色進率いるモダンロックバンド、シネマのメンバーとして、サード・アルバム『サイエンス・フィクションマン』のレコーディングに参加。楽曲も提供している。同2014年にTH eROCKERSに参加。TH eROCKERSのギタリストとして、様々なイベントに出演。2018年に陣内孝則(Vo)、百々和宏(G)、澄田健(G)、穴井仁吉 (B)、田中元尚(Dr)と言うメンバーで同年12月31日の「New Years World Rock Festival」に出演、翌2019年4月に38年ぶりのオリジナルアルバム『Rock'n Roll』をリリース。全国ツアーを行った。


最近はうじきつよし(Vo、G) 川上シゲ(B)、武田“チャッピー”治(Dr)らと、Chappy'sを結成、活動中。うじきとのユニット「うじきタケシ」でもライブを行っている。昨2023年にはアカネ&トントンマクートの下山淳(G、Vo)、穴井仁吉(B、Vo)、延原達治(Vo、G)、茜(Dr)らが結成したYAMAZEN(山部“YAMAZEN”善次郎)&The 幌馬車に参加、“埼玉・東京ツアー”に同行した。昨2023年5月からは鮎川誠の生前に指名を受け、シーナ&ロケッツのギターとして活躍。同年8月からシナロケのステージでは鮎川の愛器1969年製の塗装の剥げた黒のギブソンレスポールカスタムとマーシャルアンプを使用している。


2020年に初のソロアルバム『Magenta』、2021年から活動を始めた"CRAZY" COOL-JOE(B)、湊雅史(Dr)らとの爆裂ロックトリオ「D runkard Ball」のミニアルバム『Drunkard Ball』を2023年にリリースしている。


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この日は日曜日、下北沢は人でごったがえす。今回の会場である「CLUB Que」は同所の老舗ライブハウスで、ブッキングマネージャーは元ピールアウトのドラマーで、最近はザ・クラッシュのアイテムのコレクターとして知られる高橋浩司。今回の澄田のハッピーバースデイライブも彼の強い要望で開催されることになった。澄田自身は特にそんな華々しいことを考えていたわけではないようだ。2023年は特別な年でもあると同時に澄田にとっても節目になった年ではないだろうか。いずれにしろ、彼のバースデイライブにはたくさんのミュージシャンが参加している。これも澄田健の人徳ゆえのことだろう。


開演時間の午後6時30分を10分ほど過ぎて、ステージに澄田健が登場する。彼一人がギターを抱え、「ロングブラックヘアー」を歌い出す。同曲は彼の初のアルバム『Magenta』 に収録されたナンバーで、歌詞を元ガスタンクのBAKIが書いている。ギター1本だけでグラマラスな世界を体現、官能的な歌唱で聞かせる。ダークなトーンながらどこかに華がある、いかにも澄田らしい。


同曲に続き、“だいぶ前に60歳になった人達の曲です”と紹介して、サンハウスの「あて名のない手紙」を披露する。作詞した柴山俊之は既に76歳、現在闘病中である。作曲した鮎川誠は昨2023年1月29日に逝去、享年74。柴山には回復を祈念し、鮎川には追悼を込めて演奏したのではないだろうか。いうまでもなく、彼らは澄田の恩人であり、彼らと関わることで、澄田は成長し、その存在を確立していった。その思いはきっと、あて名などなくても届いたはずだ。


同曲に続き、エルヴィス・プレスリーの「Baby,Let's Play The House(ベイビー・レッツ・プレイ・ハウス)」を演奏する。オリジナルはアーサー・ガンターで、1955年にサンレコード在籍時のエルヴィスがロカビリー調にカバー。レコーディングには、スコティ・ムーアがリードギター(ギブソン・ES-295を使用)、ビル・ブラックがベースで参加している。その唱法や奏法は、ネオロカビリーのバンドにも影響を与えているという。澄田の音楽的なルーツが伺える。


そして同曲に続けて歌ったのは、そのルーツの深いところにあるであろう「音戸の船頭歌」。澄田は歌う前、“呉市、知っています? 呉市の民謡を歌います。ワークソングです”と説明している。澄田の生まれ故郷、広島県呉市の民謡で、瀬戸内海の艪漕舟唄(漁師が舟を漕ぐときの歌)として広い地域で親しまれてきたという。呉市と倉橋島の音戸町との間にある「音戸の瀬戸」(瀬戸は海峡を意味する)は、干満につれて急流となり渦が生まれる難所で、この海路は船頭泣かせでもあり、この歌を歌いながら漕ぎきったそうだ。「音戸の瀬戸」は平清盛が開削したという伝説もある。おそらく、少年時代から同歌に慣れ親しみ、人生の難所に出会う度、この歌を思い出したのではないだろうか。


広島県呉市は、戦国時代は村上水軍の根城でもあり、明治時代以降は、帝国海軍・海上自衛隊の拠点となっていた。呉には「大和ミュージアム」(呉市海事歴史科学館)がある。同ミュージアムは戦艦「大和」を建造した軍港、日本一の海軍工廠のまちとして栄え、戦後は、世界最大のタンカーを数多く建造する明治以降の「呉の歴史」と造船・製鋼を始めとした各種の「科学技術」を紹介する博物館である。往時の市井の生活模様は、こうの史代の漫画『この世界の片隅に』、同漫画を原作に片渕須直監督が映画化した同名の劇場アニメーション映画を見ていただきたい。ちなみに深作欣二監督、菅原文太主演の任侠映画の傑作シリーズ『仁義なき戦い』の舞台にもなっている。近年では2018年5月に公開された、白石和彌監督、役所広司主演の映画『孤狼の血』のロケ地になっている。同作の続編『孤狼の血level2』(監督は白石和彌、主演は前作で助演の松坂桃李。2021年8月公開)も同所で撮影が行われた。


「音戸の船頭歌」の演奏中、澄田のギターの弦が切れるというアクシデントが起こる。そうすると、この日の出演者であるうじきつよしが弦を持って、現れる。Chappy'sのバンドメイトからの嬉しい“助け舟”だ。



同曲を終えると、モトサイコのバンドメイト、サトウミノルがドラムとして加わる。澄田の最新のオリジナル「花鳥風月」を披露する。途中に沖縄音階を取り入れ、澄田のエスニック、フォークロアへのアプローチなど、多彩な音楽性を物語る。同曲にも途中からうじきがコーラスとして加わる。こんな裏へ回ってのフォローもうじきらしく、彼と澄田の良好な関係性を伺わせる。同曲を終えると、澄田の“ソロセット+”は終了。午後7時を10分ほど、過ぎていた。


10分ほどの休憩後、アカネ&トントンマクートが登場する。この日は変則メンバーで、茜の代わりに「CLUB Que」の高橋浩司がドラマーを務めている。延原達治(Vo、G)、下山淳(G、Vo)、穴井仁吉(B、Vo)、そして高橋浩司(Dr)というラインナップになる。まずはアカネ&トントンマクートだけで、お馴染みのニール・ヤングの「ライク・ア・ハリケーン」(下山)を披露する。


同曲を終え、延原は“友達の澄ちゃんの栄光の60代に捧げます”と告げる。そういう延原も1か月前に60歳になったばかり。誕生日の10月26日には荻窪「TOP BEAT CLUB」でバースデイライブを行っている。同ライブには澄田も出演している。お返しの気持ちもあるのだろう。



穴井が澄田とやっていたMOTOPHYCO R&R SERVISの「GOT FEEL SO GOOD」を歌う。“今日は澄田の誕生日なんで、あんまりしゃべりません”と言うが、結局、しゃべることになる。延原の時もしゃべらないと言っていたが、“穴井劇場”が始まっていた。“昔は60でご隠居です。高橋は56歳で最年少です”と指摘しながらも澄田も延原もご隠居ではなく、若旦那にしか見えない。年齢を感じさせない若々しさがある。延原は澄田のエスニックともグラムともつかない、年齢不詳、国籍不明の恰好を“謎の王子様ファッション”と表現する。澄田にしろ、延原にしろ、60歳になっても“王子様”感を醸し出す。流石、“ロッカー”である。


ルースターズの「ロージー」のダブバージョン「ロージーDUB」(延原)、 “大酒飲み女の歌”と紹介し、マディ―・ウォーターズの「ウィスキーへデッドウーマン」(下山)を畳みかける。穴井が中学生の時から好きな曲だという、鮎川誠が作詞・作曲したサンハウスの「おいら今まで」を見事に歌いきる。いずれもアカネ&トントンマクートではお馴染みのナンバーだ。



澄田が午後8時過ぎ、ステージに登場する。彼に“ハッピーバースディ”が歌われた。トントンマクートに合流すると、説明不用の「キャデラック」(延原)が披露される。同曲では火を噴くような澄田と下山のギター合戦が行われる。広島・呉のジェフ・ベックと山形・鶴岡のジェフ・ベックの“夢の競演”。延原は“素晴らしいジェフ・ベック大会”と嬉しそうに語る。


昨2023年1月にYAMAZEN & The 幌馬車での共演、7月にアカネ&トントンマクートの“サマーツアー”の京都「拾得」公演に出演できない下山の代理リーダーを澄田が務めただけである。バンドと澄田との息はぴったり。栄光の準メンバーだ(本2024年1月26日には所沢「MOJO」でアカネ&トントンマクートに澄田を加え、“MOJO RISING”として穴井の65歳のバースデイライブを行っている)。


延原がハープをブルージーにブロウし、澄田が渋い歌声とギターを聞かせる。CCRでお馴染みの「スージーQ」だ。ルーツミュージックを深掘りしていく彼らに相応しいナンバーだろう。


同曲を終えると、延原は“最後の曲だぜ”と告げ、ルースターズの「DO THE BOOGIE」を披露する。下山が歌詞に“穴井仁吉と踊り明かそう”と歌い込むなど、“穴井いじり”するところに“穴井愛”が溢れだす。同曲でも下山と澄田のギターバトルが「DO THE BOOGIE」を一段と映える曲にしていく。圧巻の大団円を迎え、澄田健とアカネ&トントンマクートはステージを去っていく。同セットを終えると、15分ほどの休憩になる。




午後8時30分過ぎて、澄田が穴井仁吉、サトウミノルとともにステージに戻ってきた。MOTO-PSYCHO R&R SERVICE(通称“モトサイコ”!)である。ご機嫌なロックンロールをデリバリーする3ピースバンドの登場に会場は沸き立つ。澄田はモトサイコのヴォ―カリスト、ギタリストとして「Jack The Ripper」(Link Wray)、「ROCK BILLY BOOGIE」(ロバート・ゴードン)、「Sugaree」(Rusty York)を披露する。澄田が持つロッカーとしての資質を物語る選曲であり、華やかで煌びやかなのが彼らしいと言っていいだろう。佇まいを含め、どこかに“色気”があるのだ。


同曲の後は穴井がフリートウッド・マックの「アルバトロス」で決め、メンバー全員でスタンリー・キューブリックの傑作『2001年 宇宙の旅』の「2001年 宇宙の旅のテーマ」で締める。ロカビリーからクラッシックへ、大海原から宇宙へ――こんな場面展開の自由さもモトサイコらしい。




同曲を終えると、このセットの最初のゲストとして、元ガスタンクのBAKIが呼び出される。前述通り、彼は澄田のソロアルバム『Magenta』に歌詞を提供している。BAKIと穴井はバンドメイトでもある。2002年に中山加奈子が企画したイベントで、意気投合したBAKI、KASUGA、穴井仁吉、KYOYAの4人が、2004年にMOSQUITO SPIRAL(モスキート・スパイラル)として本格的な活動を開始している。BAKIがステージに上がるだけで、会場の空気が変わる。圧倒的な存在感が観客を威圧する(!)。そんな彼が歌ったのはアンセムとでも言うべきナンバー、ニール・ヤングの「ROCKIN' IN THE FREE WORLD」だった。圧巻のパフォーマンスを終えると、BAKIはステージから消える。


澄田が“悪い友達の代表でした”とBAKIを改めて紹介し、“次は良い人の代表です”と告げて、中山加奈子を紹介した。




彼女はジョニー・サンダースが書いて、ロニー・スペクターもカバーした「You can't  put your arms around a memory」(エアロスミスのジョー・ペリー、ジョニー・デップ、アリス・クーパーによるプロジェクト「ハリウッド・ヴァンパイアーズ」も2019年にカバーしている)を歌った。オリジナルのやさぐれたロックっぽさと悲しいほどのキュートさを内包したポップンロールに仕上がっている。中山加奈子の魅力が思う存分、引き出されたナンバーだろう。同曲を終えると、中山は“私の母も広島出身です。この曲は穴井さんの推薦でした”と気さくに語りかける。


同曲に続いて、中山は「Everybody's VooDoo Hawaiians」を披露する。澄田がVooDoo Hawaiiansのために書いたナンバーである。同曲はVooDoo Hawaiiansの“テーマソング”とでもいうべきもので、2019年に開催された同バンドの結成20周年記念イベントのタイトルにもなっている。澄田のギターは中山の歌を気持ちよく、転がしていく。会場全体が幸せな気分に満たされる。


会場にいる誰もが嬉しそうに笑顔なのが印象的である。もっとーーとお代わりを求める観客に笑顔を浮かべ、中山はステージを去って行った。



澄田は“最後のゲストになりました”と告げ、うじきつよしを呼び出す。うじきは既にフライング気味に最初のセットで登場しているが、本格的な出番は“トリ”になる。彼は“澄ちゃんと出会って、8年目。彼と知り合って、いろんな人と一緒にできるようになりました”と語る。いまや、リクオやPANTAなど、いろんなところへ顔を出し、その度に強い印象と深い感動を与えてくれるうじきだが、そんな自分になれたのは澄田健がいたからだだろう。彼は出会うものへ旅に出る機会と理由を授ける。触媒的なところもあると言っていいかもしれない。うじきは、どんとが作ったボ・ガンボスの「夢の中」を心込めて歌う。その歌に澄田は寄り添い、引き立てるソロを被せていく。



うじきは同曲を終えると、“恒例の――やらせいただきます”と会場に言い放つと、お馴染み、子供ばんどの「サマータイムブルース」を力の限り、思い切り叫ぶ。会場もうじきの歌に合わせ、叫ぶ。“あんたはまだまだ、子供だよ”という“恒例の”掛け合いは“60歳なんて、まだまだ子供だよ”なんて、言っているようにも聞こえる。60になった澄田へのエールではないだろうか。そんなエールとコール&レスポンスとスクリームが交差する興奮の下北沢「CLUB Que」は、“澄フェス”の会場と化す。同曲を終えると、澄田は“ありがとうございました。皆様のお陰です。感無量”と、その場に居合わせた出演者、スタッフ、観客……すべてに感謝を語る。メンバーがステージを去った。時計は午後9時50分を指している。



数分して、彼らは帰って来る。ケーキセレモニーは穴井が担当する。ケーキのろうそくの火を吹き消すと、“ハッピーバースデイ”が再び、歌われる。





そんなセレモニーに続き、アンコールが行われる。BAKIやうじきを始め、オールスターキャストで、「マイウェイ」が歌われる。フランク・シナトラとシド・ヴィシャスの合唱のような同曲だが、何か、澄田の人生と、この場にいる人達の人生が重なっていくのを感じる。出会いとは不思議なものだ。ここにいる誰一人として欠けてもこの暖かい空気は生まれなかっただろう。同時にかくも多くの人達に澄田が愛されていることを再確認する。さらにこれは彼の集大成ではなく、まだ、やること、やれることがたくさんあることを感じさせるのだ。齢60にして伸びしろはたんまりあると言っていいだろう。


考えてみれば澄田の横には宙也や柴山“菊”俊之、陣内孝則、中山加奈子、うじきつよし、ルーシー・ミラー……など、当代随一のヴォーカリストが立っていた。その傍らで彼らを盛り上げ、引き立てていた。「日本の“ロック”を“ロール”させる男」とまで言われる。だからと言って、彼は単なる盛り上げ役ではないし、単なる引き立て役でもない。そのことを思うと、かつて三谷幸喜の舞台やドラマの常連で、『王様のレストラン』や『古畑任三郎』、『ショムニ』などに出演していた伊藤俊人が2002年にくも膜下出血で亡くなった時に三谷が発表した追悼文を思い出さずにはいられない。そこには以下のような言葉が綴られていた。その一部を抜粋する。



「(新聞報道で、彼のことを『名脇役』としたものがありました。)この世に『脇役』という役はあっても、『脇役俳優』という職業はありません。伊藤俊人は『脇役』もできる、優れた俳優でした。これから歳を重ね、軽さの中に、哀しみやペーソスが加わった、味のある役者になるはずの男でした。哀愁はあっても、決して暗くはならない、日本では珍しいタイプの俳優になるはずの男でした。そして50を過ぎたあたりで、代表作となるような作品に出会うはずの男でした。人生って捨てたもんじゃないなって思わせる、地味だけどあったかい映画の主人公を演じるはずの男でした。」


延原達治はバースデイライブで“135歳まで生きる”と言っていたが、澄田健も酒の飲み過ぎが気になるが、135歳まで生きそうだ。


“ロックンロールにゃ老だけど死ぬにはチョイと若すぎる(Too Old to Rock 'n' Roll: Too Young to Die! ”ではなく、“ロックンロールにゃ若すぎるし、死ぬにもチョイと若すぎる(Too Young to Rock 'n' Roll: Too Young to Die!)”だろう。


そうなると、60は単なる通過点、さらなる到達点が待っている。知る人ぞ知る存在ではなく、誰もが知る存在になる――そんな予感を抱かせるのだ。


澄田はこの日の最後に“長い時間、ありがとうございました。改めて感無量。今日のことは忘れません”という言葉で締めくくった。時間はライブ開始から3時間を過ぎ、午後10時になろうとしていた。きっと、彼は新たな到達点へのスタートを切った2023年11月26日のことを忘れないだろう。しっかりとこれからの澄田健を見届けていきたい。





2023.11.26下北沢CLUB Que [TAKESHI SUMIDA ] HAPPYBIRTHDAY LIVE PARTY

~癸卯KANREKI~ 


■澄田健ソロ

1 ロングブラックヘアー(澄田)

2 あて名のない手紙(サンハウス)

3 Baby,Let's Play The House(Elvis Presley)

4 音戸の船頭歌(広島県呉市の民謡)


■澄田健+サトウミノル+うじきつよし

5 花鳥風月(澄田)


休憩


■トントンマクート(下山淳+穴井仁吉+延原達治+高橋浩司)

6 LIKE A HURRICANE(ニール・ヤング)下山

7 GOT FEEL SO GOOD(MOTOPHYCO R&R SERVIS)穴井

8 ロージーDUB(ルースターズ)延原

9 Whiskey Headed Woman(マディ・ウォーターズ)下山

10 おいら今まで(サンハウス)穴井


■トントンマクート+澄田健

11 キャデラック(YAMAZEN)延原

12 Susie Q(Creedence Clearwater Revival) 延原+澄田

13 DO THE BOOGIE(THE ROOSTERS)下山+延原


休憩


■MOTO-PSYCHO R&R SERVICE(澄田健+穴井仁吉+サトウミノル)

14 Jack The Ripper(Link Wray)

15  ROCK BILLY BOOGIE(ロバート・ゴードン)澄田

16  Sugaree(Rusty York)澄田

17  Albatross(フリートウッド・マック)穴井

18  2001年宇宙の旅のテーマ


■MOTO-PSYCHO R&R SERVICE(澄田健+穴井仁吉+サトウミノル)+BAKI

19 ROCKIN' IN THE FREE WORLD(ニール・ヤング)BAKI


■MOTO-PSYCHO R&R SERVICE(澄田健+穴井仁吉+サトウミノル)+中山加奈子

20 you can't  put your arms around a memory(ジョニー・サンダース ロニー・スペクター)中山加奈子

21 Everybody's VooDoo Hawaiians (VooDoo Hawaiians)


■MOTO-PSYCHO R&R SERVICE(澄田健+穴井仁吉+サトウミノル)+うじきつよし

22 夢の中(ボ・ガンボス)うじきつよし

23 サマータイムブルース(子供ばんど)うじきつよし


■ALL STARS

EC MY WAY(フランク・シナトラ シド・ヴィシャス)BAKI&澄田&more



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