• FUKUOKA BEAT REVOLUTION

素顔の苣木寛之『DUDE TONE LIVE 2022 “Walkin’ Blues” Vol.7』

“みんなが本当にしんどい時に何もできなかった。回れるようになったので、それを取り戻していきたい”――と、苣木寛之は観客に告げる。そこには気負いもはったりもない。素顔の苣木寛之を晒す。例え弱音を吐いたとしても、謝罪を込めたとしてもそこには彼の誠実さがある。

8月6日(土)、名古屋「TOKUZO」で、THE MODSの苣木寛之のソロプロジェクト“DUDE TONE”のアコースティックライブ『DUDE TONE LIVE 2022 “Walkin’ Blues” Vol.7』を見た。

7月24日(日)新横浜「strage」、7月30日(土)熊本「ONE DROP」、 7月31日(日)福岡 「LIVEHOUSE CB」、8月6日(土)名古屋「TOKUZO」、8月7日(日)大阪 南堀江「knave」、8月11日(木・祝)東京 南青山「MANDALA」という、DUDE TONEとしては3年ぶり、全国6カ所を巡るツアーになる。

東京の近郊で見れれば良かったのだが、既に予定があったため、名古屋になる。ただ、仕方なく名古屋ではなく、また、名古屋で見たかった。実は前回、2019年の同ツアー『DUDE TONE LIVE 2019 "Walkin' Blues" Vol.6』を同年6月7日(金)に同じく名古屋「TOKUZO」で見ている。どうせ見るなら前回との比較、また、コロナ以前、以後、同じところで見たかったのだ。苣木はこのライブの中で“「TOKUZO」でライブをやれるようなソロアーティストになりたかった”と語っている。THE MODSと言う金看板を外し、苣木寛之というソロアーティストの底上げをするとともに、その現在地を確認したかったのではないだろうか。同所は多くのミュージシャンがライブハウスをサーキットする際、かならず、立ち寄るところでもある。ミュージシャンの試金石になる場所と言っていいだろう。

苣木のソロプロジェクトは、DUDE TONEの“メンバー”である元THE ROOSTERS(Z)、現ROCK'N'ROLL GYPSIESの花田裕之の“流れ”に影響を受けたものである。自らブッキングし、ソロで全国のライブが出来る場所(ライブハウスに限らず、カフェやバーなども花田はブッキングしている)を回るというもの。今回もこれまで同様、文字通り、苣木自らが独立独歩で動いている。

ただ、今回は3年前とは前提条件が違う。ライブの告知には“本ツアーの全公演は、厚生労働省のイベント開催に関するガイドラインに基づき、『大声での歓声や声援がない公演』として、各地規制された収容人数の範囲内で実施いたします。”と書かれている。当然の如く、それは単なる告知ではなく、実際に歓声の規制や入場者の制限があるというもの。

THE MODS自身はこのコロナ禍の中、THE MODS TOUR 2019-2020 “KICK ON BOOTS”の一部公演中止、THE MODS Premium Acoustic Tour 2020 “BLUES BRIGADE II”の全公演中止を経て、様々な対応と対策で2021年の40周年記念ツアーTHE MODS 40TH ANNIVERSARY LIVE「約束の地」、2022年のTHE MODS 40TH ANNIVERSARY LIVE ENCORE「続・約束の夜」をやり切っている。先日、7月9日(土)に日比谷野外大音楽堂で大団円を迎えたことも記憶に新しい。

その間、苣木寛之はソロプロジェクト“DUDE TONE”として7年振りのマキシシングル「VOICE」を12月15日(水)にリリースしている。「可愛いジニー」から「コロナのせいで」(2020年4月にTwitterにアップした曲をレコーディングしボーナストラックとして収録)までの全5曲を収録。16ビートのナンバーからアコースティックなブルースまで、THE MODSの苣木寛之とは違うソロアーティストDUDE TONEの苣木裕之の歌と音を聞くことができる。


いわば、今回のツアーは同作のお披露目でもある。会場の名古屋「TOKUZO」はオールスタンディングではなく、すべて着席。多少、余裕を持たせているが、用意された席はすべて埋まっている。今回のツアーは各地でソールドアウトになったという。苣木寛之が求められている証拠だろう。また、DUDE TONEのTシャツ(THE MODSのいかついTシャツとは違い、可愛らしい。今回はウクライナの国旗と同じ配色になっている)を着ているものも目立った。

開演時間の午後6時、オープニングSE(BGM)が流れ、オンタイムに苣木寛之がギターを抱え、ステージに登場。この日のライブが始まる。


昨2021年12月にリリースしたマキシシングル「VOICE」に収録された軽快でいて、陰鬱な響きを内包する「可愛いジニー」から始まる。「酷いあだ名」を挟み、彼は観客に会場いっぱいに人が集まってくれたことに感謝を告げ、かのクラプトンの「Change The World」を弾きだし、それから「コロナのせいで」に移る。この構成は本人がいうように“企画倒れ”かもしれないが、この“激変”した世界を歌うヘヴィーな内容の同曲を弾き語るにはいい“振り”ではないだろうか。

前述したようにTHE MODSはコロナ禍以前、森山の体調不良もあって、歌詞通りライブの“延期の延期の延期の延期”を繰り返した。それがコロナ禍で、延期ではなく、中止にもなった。ライブハウスから遠ざかるを得なかった。苣木によると、ライブができないだけではなく、レコーディングなどもできず、メンバーとも会えなかったという。バンドの活動が停止してしまった。バンド存続の危機、それも音楽性の違いや方向性の違いなど、内的要因ではなく、コロナという外的要因によるものになる。その葛藤や苦闘は歌詞にも歌われるが、それ以上に彼は観客に度重なる中止や様々な制限や規制があることを謝罪する。思い切り、弾けることもできず、陰気なライブになるかもしれないが……と釈明までする。あまりにも赤裸々な言葉で驚くが、いかに彼が観客のことを思い、同時に思い通りライブができない葛藤までも吐露する。そんな苣木を初めて見たかもしれない。

それだけ、過酷な状況だったということだろう。いかにTHE MODSがそのことに苦心惨憺して、ライブを続けていたかを改めて知らなければならない。野音で“ロックンロール”と叫んでいた酔っ払いどもに猛省を促したいところだ。

変な言い方だが、THE MODSは弱音を吐けない。吐くとしてもそれを物語に昇華しなければならないだろう。表現者としての制約がのしかかる。DUDE TONEは“プロジェクト”であるが、苣木寛之そのものでもある。THE MODSとは違う生々しさはそれゆえのことではないだろうか。


同時にこの日、7曲目に披露された「親不孝通りを抜け」は、THE MODSの「TWO PUNKS」とは趣や響きが違うものの、福岡から東京へ、アマチュアからプロへなるという瞬間を捉えたもの。THE MODSのデビュー40周年を記念する最新オフィシャルブック『THE MODS 40th Bye Bye Stardom, Hello Rock’n’Roll』(シンコーミュージック・エンタテインメント)には苣木が30周年の時に作り、出来ていたのはサビだけだったが、森山に聞かせたところ、“爽やかな曲やね”の一言で終わり、THE MODSのナンバーになることはなかったという。時を経て、DUDE TONEで博多でのライブが親不孝通りの先のライブハウスであり、その曲を思い出し、形にした。そして「VOICE」で苣木のナンバーになる。2021年12月17日に福岡のRKBラジオの番組『Got Many Tunes』(MC深町健二郎)に出演した際、博多時代にバンドの練習に行くため、毎日親不孝通りを歩き、「80's FACTORY」のある長浜公園を曲がるとベースの北里(晃一)が待っていた。「80's FACTORY」の店長だった伊藤エミ(後に上京し、THE STREET SLIDERSやCHABOのマネージャーになる)がTHE MODSがデビューするまでの一年間、店が開いてない時間帯は鍵(北里が鍵を預かっていた)を貸してくれて自由に練習に使わせてくれたと語っている。私自身、その当時の彼らに取材する機会を得たが、森山達也と北里晃一は既に覚悟が決まっている。後から入った苣木寛之と梶浦雅弘は不安を抱えながらもTHE MODSになろうとしていた。笑い話のように聞こえるかもしれないが、音楽以前にTHE MODSのメンバーとしての歩き方や煙草の吸い方までも叩き込まれたという。同曲を聞いていると、そんな日々の風景も浮かぶ。青春時代をプレイバックしたものだが、屈折がなく、直截なものは苣木でなければ作れなかったのではないだろうか。

チューリップや甲斐バンドなどを例に出すのは躊躇われるかもしれないが、福岡のバンドのルーツに流れるフォークのエッセンスみたいなものも感じる。花田の“流れ”などでも時々、そんなところが出てくる。もっともそれが歌謡曲に傾かず、ロックに軸足があるところは彼らのならではだろう。



そんなフォークでもフォークブルースを感じさせるのは「SLUMBER」や「BACK ROOM」などのナンバー。愛器「エピフォン・テキサン」から溢れ出るブルースフィーリングはDUDE TONEらしい。逆にTHE MODSではなかなか、出しづらいものでもある。

この日は意外なナンバーもカヴァーされた。苣木は“EPIC時代のレーベルメイトで、なんの面識もないけど、尊敬するバンドです。そのバンドのヴォーカルが大病してしまった。いまは回復して、復帰が決まったらしい。彼の(バンドの)歌を歌います”と、告げ、THE STREET SLIDERSのアルバム『SCREW DRIVER』に収録された「かえりみちのBlue」を弾き語る。

HARRYこと、村越弘明は2020年1月、THE STREET SLIDERSの盟友・蘭丸こと、土屋公平とのユニット「JOY-POPS」で2年ぶりの全国ツアー《Tour 2020 NEXT DOOR》が決定したが、ツアーの直前、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により全公演の日程が延期となる。翌2021年5月7日、自身の公式サイト「HARRY‐STATION」 で“現在病気療養中であること”を公表。“今後は治療に専念し、ライブが行える状況になった際は改めて告知する”こととなった。そして本2022年9月11日(日)には東京・渋谷「SHIBUYA PLESURE PLEASURE」でエレキギターとアコースティックギターを駆使し、ギター1本でプレイするワンステージ60分の貴重なLive 『Murakoshi "HARRY" Hiroaki Solo Live 2022 「So Alone」』が開催される。同時にJOY-POPSの新作ミニアルバム スタジオ録音盤『JOY-POPS 夜更けの王国INNER SESSIONS 2』(共作の新曲全5曲を収録。受注生産! 通販限定盤!)も8月にリリースされた。HARRYが帰って来たのだ。

苣木の歌う、その歌はまるで病気とコロナに立ち向かう仲間への励ましのエールのように聞こえた。同時にHARRYのみならず、この困難な状況にあっても不退転の決意を心と身体に刻む、すべてのロックバンドへの優しい癒しのようなメッセージにも思えた。

会場のしっとり、しんみりした空気を感じたのか、“Change of pace”とばかり、「成層圏までぶっ飛べ」、「Rock-a-Hula-billy」と、勢いと活気のあるロックナンバーを会場に届ける。苣木は「Rock-a-Hula-billy」を歌う前に“暗いライブに付き合ってくれて、ありがとう。最後は明るい歌を歌うよ”と告げている。仮に暗い内容の歌でも辛気臭くないことは、観客はわかっている。身体で反応している。客席も規制や制約の中、心を思い切り弾けさせているのだ。

2曲を畳みかけ、苣木はステージから消える。わずか、開演から1時間ほど、午後7時前になる。アンコールを求める拍手の中、苣木がステージに戻って来る。

苣木は2021年にリリースしたマキシシングル「VOICE」に収録している「CRYIN’ BLUES」と、2010年にリリースしたファーストアルバム『AFTERGLOW』に収録している「明日への切符」に明日への祈りを込める。「CRYIN’BLUES」ではギリギリの所で踏み止まって“元気を出していこうぜ”と叫び、「明日への切符」では“想いよ、届け”、“願えよ、叶え”と連呼するのだ。

そんなメッセージを客席に投げかけ、苣木はステージを去る。再び、アンコールの拍手に促され、ステージに戻る。2度のアンコールを受けた彼の顔からは満足そうな笑みがこぼれる。

2回目のアンコールは同じくファーストアルバム『AFTERGLOW』から「タブンイカレタTV」が披露させる。毎日、テレビから排出されるおかしなニュース。いまはテレビなどではなく、SNSなどから溢れ出しているかもしれないが、制御不能、混乱と混沌を極める時代や社会への痛烈なメッセージである。THE MODSでも同様の歌は数多いが、DUDE TONEでは苣木らしい切り取り方をしていると言っていいだろう。

そして、デビューシングル『BACK ROOM』にカップリングされた花田裕之と苣木寛之が交互に歌うという「WISH YOU WERE HERE」(ファーストアルバム『AFTER GLOW』に収録)を苣木が弾き語る。いうまでもなく、1975年に発表されたピンク・フロイドのアルバム『Wish You Were Here』(邦題『炎~あなたがここにいてほしい』)のタイトルトラック。一般には精神を病んでバンドを脱退したシド・バレットに向けられたものと言われているが、ロジャー・ウォーターズによると"彼に向けたものではなく、より普遍的な意味が込められている"。らしい。いずれにしろ、"愛する「You」の不在を嘆く“もの。おそらく、いまこそ、求められる歌ではないだろうか。このコロナ禍の中、多くの不在と別離があったはず。そんなことを改めて考えさせるのだ。

コロナ禍の“ブルース”を弾き語ることで吹き飛ばし、聞くものへ元気を与える。不退転の覚悟で前進する彼の歌は生々しく、美しい。

この曲の余韻は深く、聞くものの心の中に楔を打ち込んでいく。苣木は“本体、アコースティックギターや弾き語りは好きでない”と言っていたが、このDUDE TONEの“Walkin’ Blues”を通して、弾き語りをすることで、“ギターがいろんなことを教えてくれた”と語る。そんな蓄積がいまの苣木にあり、それが歌や音に反映される。改めて、THE MODSの苣木寛之ではなく、DUDE TONEの苣木寛之という“素顔”に触れる貴重な機会になったのではないだろうか。

わずか、1時間30分ほどのライブながら観客の満足度は高いものになった。観客の嬉しそうな顔がそれを証明している。苣木が演奏を終えると、ウィリー・ネルソンが歌う「MY WAY」が流れた。シド・ヴィシャスでないところが彼らしい。苣木寛之と言う“MY WAY”がそこにはあった。

苣木はその日、名古屋のライブを終え、次の公演地である大阪入りしている。そして千秋楽の東京でのライブで大団円を迎えた。こんな状況の中、この完走の価値は大きい。苣木は一回りも二回りも大きいアーティストになっているはずだ。

THE MODSはこの11月25日(金)・26日(土)の名古屋「BOTTOM LINE」から大阪、福岡を経て、12月15日(木)・16日(土)東京「LIQUIDROOM」まで、全国4カ所、各地2公演づつ計8公演のアコースティックツアー『THE MODS Premium Acoustic Tour2022 “DRIVE WAY JIVE”』を行う。同ツアーは従来通り、“本ツアーの全公演は、厚生労働省のイベント開催に関するガイドラインに基づき、『大声での歓声や声援がない公演』として、各地規制された収容人数の範囲内で実施いたします。”となっている。

既にSNSを通じて、メンバーの北里晃一がこの8月にコロナへの罹患したことを公表している。行動制限期間は終わり、体調も回復つつあるが、コロナが他人事ではなく、身近なものであることを認識している。制約や規制は続くが、その中、観客の方にはルールを守っていただき、彼らに無事の完走に協力してもらいたいもの。考えてみれば、彼らのアコースティックツアーも2020年6月20日から開催を予定していたTHE MODS Premium Acoustic Tour 2020 “BLUES BRIGADE II”が全公演開催中止になっている。実は2年ぶりの公演になる。もう少し我慢が必要になるが、元気な彼らに会いたいもの。キャパシティを考え、各地2公演にしたのは、ファン思いの彼ららしいところ。ANOTHER SIDE OF THE MODSを目撃して欲しい。

DUDE TONE LIVE “2022 “Walkin’Blues”Vol.7 2022 0806 名古屋TOKUZO

0. Opening SE

1. 可愛いジニー(「VOICE」2021年)

2. 酷いあだ名(未発表曲)

MC

3. Change The Word(Inst)~コロナのせいで(「VOICE」2021年)

MC

4.LITTLE BLUE(『十字路のGuitar』2014年)

5.POOR BOY SCAT(THE MODS 「BRICK DISTORTION」2019年)

6.LONG SHADOW WAY(『AFTERGLOW』2010年)

MC

7.親不孝通りを抜け(「VOICE」2021年)

MC

8.月夜(未発表曲)

MC

9.SLUMBER(「VOICE」2021年)

10 .BACK ROOM(「BACK ROOM」2010年)

MC

11.かえりみちのBlue(THE STREET SLIDERS『SCREW DRIVER』1989年)

MC

12 .成層圏までぶっ飛べ(『十字路のGuitar』2014年)

13.Rock-a-hula-billy(THE MODS『 Gang Rocker...If』2009年)

EC1

MC

1. CRYIN' BLUES(「VOICE」2021 年)

2. 明日への切符(『AFTERGLOW』2010年)

EC2

MC

1. タブンイカレタTV(『AFTERGLOW』2010年)

2. Wish You Were Here(「BACK ROOM」2010年・『AFTERGLOW』2010年)



『THE MODS Premium Acoustic Tour2022 “DRIVE WAY JIVE”』

11月25日(金) 名古屋 BOTTOM LINE

11月26日(土) 名古屋 BOTTOM LINE

12月02日(金) 大阪 味園ユニバース

12月03日(土) 大阪 味園ユニバース

12月10日(土) 福岡 スカラエスパシオ

12月11日(日) 福岡 スカラエスパシオ

12月15日(木) 東京 LIQUIDROOM

12月16日(金) 東京 LIQUIDROOM


<チケット>

前売チケット料金:全自由 7,500円(税込)

※会場によりドリンク代別途

※未就学児入場不可

THE MODS オフィシャルHP

https://themods.jp/2022/07/09/acoustic_tour_2022/

※本ツアーの全公演は、厚生労働省のイベント開催に関するガイドラインに基づき、『大声での歓声や声援がない公演』として、各地規制された収容人数の範囲内で実施いたします。必ずご購入前に【ツアーに参加される皆様へご案内】をご覧ください。

■ツアーに参加される皆様へご案内

https://themods.jp/2022/07/09/tour_information_2022winter/

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