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  • FUKUOKA BEAT REVOLUTION

大江慎也、怪鳥とともに飛翔す――Shinya Oe & Super Birds『SPECIAL 2DAYS "Time Waits For No One"』

大江慎也(Vo、G)がdipのヤマジカズヒデ(G)、元REDЯUM(Dr)のKAZIと結成した"Shinya Oe & Super Birds"が3月5日(土)、6日(日)に東京・下北沢「Flowers Loft」で『SPECIAL 2DAYS "Time Waits For No One"』を開催した。実は2020年3月に同所の開店を祝い、ライブが予定されていたが、コロナ禍のため、延期・中止となる。今回、「Flowers Loft」のオープン2周年を祝うべく2年越しにライブになる。大江の東京でのライブは3年ぶり。2019年3月15日(金)、渋谷「LOFT HEAVEN」以来になる。同ライブは大江、ヤマジ、KAZIという3人組(当時は、Shinya Oe & Super Birdsと命名されていない)のお披露目だった。


3月5日(土)はTH eROCKERS(THE ROOSTERZの“LAST FOUR”であることは言うまでもない)の穴井仁吉(B)、6日(日)はHEATWAVEやSION with THE MOGAMIで活躍する細海魚(Kb)がゲストとして出演する。


実は、このライブの直前、2月12日に自らのYouTubeチャンネルで、大江慎也はコロナに感染したが、モルヌピラビルと解熱剤の内服薬、そして期限付き自宅療養で快癒したことを報告している。当初は延期もやむを得ない状況でもあった。そんな艱難辛苦を乗り越えて、漸く、”特別な2日間”を迎えたのだ。


その2日間は、両日ともソールドアウト。入場者数や歓声、終演時間などの制限はあったが、東京でのライブを待ちかねた観客で、会場は埋まる。開演前から熱気が渦巻いる。3月5日(土)、午後7時を少し過ぎると、大江、ヤマジ、KAZI、そして穴井がステージに登場。会場の熱気は一気に高まる。興奮と期待がその場を満たす。



音が出た瞬間、その音の塊が聞くものを圧倒する。そして、大江の歌もその音に刺激されたかのように最初からマックス状態。がなっているように聞こえて、その歌詞は鮮明で、かつてないほどに意味が伝わる。


また、本人はソロ・アルバムとして承認していない初のソロ・アルバム『ルーキー・トゥナイト』(1987年)の「VISIONS OF DUSK WORLD」や「Good Dreams」(1984年にリリースされたルースターズのアルバム『Good Dreams』のタイトルトラック)など、“微妙な時期”の曲達も大江慎也の作品として披露される。このメンバーなら自らの作品に仕上げることができるという確信もあったからだろう。それらは新たな曲として蘇る。



穴井の参加はヤマジのギタープレイにも変化をもたらす。3人のときはギターを弾きながらベースを意識しなければならず、カッティングやソロの合間にルートを押さえ、ベースの音も鳴らさなければならない。いわゆるジョン・スペンサー状態である。3人のライブはそれでも過不足はなく、むしろ、その不自由さが独自の音を形作ってもいた。しかし、穴井とKAZIがステディなリズムを刻み、豊かなビートが生んでいくと、大江のギターを含め、そのリズムとビートの大海をヤマジは自由に泳ぎまわる。飛躍的に自由度が増す。轟音鳴り響く音の壁が聞くものを蹂躙していく。当然、それは耳がキーンとなるかもしれないが、人を傷つけることはない。心と身体を震わせ、音の奔流に呑み込むだけだ。


「Rosie」や「Venus」、「Swayin’ In The Air」、「Sad Song」など、大江のライブでも耳慣れた曲も新たな景色を見せ、いまという時代に嵌る。大江はその日、“罪作りな歌ばかりを作っている”と、語っていたが、それはその歌が理想や願望に溢れつつも、ある種、現実は見果てぬ夢になってしまうからかもしれない。しかし、それゆえ、切なくも美しく、尊いのではないだろうか。



大江自ら初のソロ・アルバムと位置付けるソロ・アルバム『The Greatest Music』(2006年)からも「Stream Of Fun」、「Go For The Party」「I Dream」、「何処へ行こうか」など、たくさんの曲達が披露されている。同アルバムは2005年7月の“フジロック”の“ORIGINAL FOUR”の再結成、解散ライブを経て、花田裕之、井上富雄、池畑潤二が参加してレコーディングされたものだが、誰に指図されることなく、大江慎也の曲を信頼すべき仲間が演奏している。その曲を改めていま信頼すべき仲間と演奏している。




この日、アンコールの1曲目で、敬愛するイギ―・ポップの「Tonight」を歌い、その最後を「何処へ行こうか」で締めている。「Tonight」はイギ―・ポップが1977年にリリースしたアルバム『Lust For Life』に収録された楽曲で、デビッド・ボウイが歌詞を書いていることで知られる。イギ―の復活にはボウイの力が必要だった。こじつけめくが、「何処へ行こうか」も大江を仲間が支えていた――そんな力学が作用していることを感じさせる。その日、大江の横には信頼すべき、新しい仲間がいた。大江はいまも数多の才能を引き付ける。それはアーティストしての魅力ゆえのこと。


***




そして、2日目、3月6日(日)のステージには午後7時を少し過ぎると、大江、ヤマジ、KAZI、そしてゲストの細海、さらに穴井が登場。穴井は当初予定にはなかったが、昨日に続いての参加になる。細海だけでなく、穴井まで。まさに“全部乗せ”状態だ。最初から最後までこの5人がステージに立つ。嬉しいハプニングに観客は驚きつつも歓喜で迎える。


この日も大江の信頼すべき仲間が彼を支える。いきなり、「Case Of Insanity」(1981年にリリースされたアルバム『INSANE』収録)、「Riding With The King」(1983年にジョン・ハイアットが発表したアルバムのタイトルトラック。2000年にエリック・クラプトンとB.B.キングの競演アルバム『ライディング・ウィズ・ザ・キング』でカヴァーした)を畳みかけ、一気に大江慎也の世界へと誘う。



そして「Rosie」、「King Bee 」、「Girl Friend」と、お馴染みのナンバーを"Shinya Oe & Super Birds”の新たなバージョンで聞かせる。


ヴェルベッツの「I’m Waiting For My Man」を挟み、Good Dreams」、「Why Does The Sun」、「Get Happy」、「In Nurnberg」、「Swayin’ In The Air」、「Let’s Rock」、「Stream Of Fun」……など、いま聞くべき曲達が怒涛の如く、披露される。


昨日が“音の壁”なら、この日は“音の山脈”だろう。会場を揺らすと同時に観客の心と身体に衝撃を与える。その轟音に圧倒されるのだ。穴井仁吉は自らのSNSに“HIGHWATTで。

雄鶏から怪鳥かっ~。かな。”と書き込んでいたが、二人の参加は三人へさらなる自由を与える。


大江やヤマジはさらに羽ばたくための自由な翼を獲得し、まさに“雄鶏から怪鳥へ”成長。穴井とKAZIの作り出す強靭で芳醇なビートの中、二人のギターが心地良く舞い、さらに細海のキーボードが自由に泳ぎまわり、音の海から音の大空へと飛翔していく。その音の塊は轟音でありながらも統制が取れている。自由奔放、自分勝手に見えて、神の見えざる手か、天の差配が正しい音を導き出す。勿論、お互いの手癖を知るもの同士、阿吽の呼吸もあるが、目配せ、指差し……など、メンバーが音の確認を怠らない。大江とヤマジの絡みはキースとロンか、ソロとバッキングの交換など、掛け値なしに官能的な瞬間でもある。一糸乱れることなく、幾重もの音を束ねていくのだ。



実は怒涛といいながらも途中、器材トラブル(「Good Dreams」の時、バスドラムを敲くビーターが外れ、3回くらい同じ事態が発生。最終的に「Flowers Loft」のスタッフが下北沢の系列店から代替品を持ってきた!)があり、中断になっている。もっとも演奏そのものは途切れることなく、穴井とKAZIはビートを刻み続けた。ヤマジからその間を埋めるように“素敵なトークを”と大江へ注文が飛ぶ。大江は、昨夜は2時間しか、眠れなかったと言う。その原因はプーチン。ヤマジいうところの“Good Dreams”にはほど遠い状態だったそうだ。大江は昨日も言及していたが、戦争は文化を否定する。そして、平和でなければ文化や音楽は育たないと告げる。何か、力になりたいと語りつつも、ただ、生きながらえているだけかもしれないと、自問自答する。素敵なトークタイムかわからないが、彼のまごうことなき本音であり、それは彼が音楽を続ける理由ではないだろうか。



アンコールは「Go For The Party」、「I Dream」、「She Broke My Heart’s Edge」、「Tonight」……など、珠玉の名曲を放つ。この日、大江は初期のブルージーなパンキッシュな音を再現しながらも中期のサイケデリックでゴシックな音を積み上げる。"S"と“Z”の夢と幻想を垣間見せる。勿論、懐古や郷愁ではない。“5人”の"Shinya Oe & Super Birds"によって、2022年版にアップデートされているのだ。



素晴らしき2日間である。大江慎也の新たな黄金時代の始まりだ。その瞬間に私達は立ち会えた。僥倖なことではないだろうか。大江は“生きながらえているだけかもしれない”と言っていたが、そんなことはないだろう。その歌と音は、聞くものを勇気付ける。大江がサバイバルしていくことに意味がある。自らの青春を重ね合わせるものだけでなく、新たに虜になるものにとってもだろう。大江慎也がいるということは、この生きづらい世の中を生き抜く力となる――それを改めて再確認する。


"Shinya Oe & Super Birds"の『SPECIAL 2DAYS "Time Waits For No One"』は追体験が可能になった。Live 配信決定しているのだ。DAY1、DAY2ともに期間限定での有料配信になる。見た方も見れなかった方も必聴・必見だろう。歴史の証言者(!?)になる機会を逃してはいけない。様々な制限が撤廃され、自由にライブを観覧できるようになるまで、もう少し時間がかかるかもしれないが、まずは下北沢で起こった夢のような2日間を追体験してもいたい。変化と進化は、音は轟音で爆音だが、深く静かに進行しているのだ。



数々の困難や試練を乗り越え、2日間をやり終えた大江慎也からメッセージが届いている。飾ることない、彼の言葉に触れ、噛みしめて欲しい。“再演”も近いのではないか。


***


<大江慎也コメント>


久しぶりの東京行きでしたが、東京在住のみんなも温かく、Friendlyに迎えてくれました。ライブは、1日目、2日目と、少し趣を変えた構成でしたが、ファンの皆さんも、楽しんでくれたようです。


個人的な話になりますが、自分の体調がよくなかった昔の頃に演っていた曲も沢山あったのですが、そんな曲も今の感じで少し変えて演れたことも含め、メンバーとゲストミュージシャンと、いい形でライブが出来ました。


会場に来てくれたファンの皆さん、有難うございます。

そして、フラワーズロフトのスタッフの皆さん、手伝って戴いた方々に感謝します。

“ニュールンベルグでささやいて”や、”Let’s Rock”等の曲もSuper Birdsでは初めてでした。

ヤマジ君、KAZI君、そして穴井君、魚さんとのバランスも良かったと思っています。

皆様お疲れ様でした。


福岡の自宅に帰宅して数日、まだライブの力(?)なのか、疲れは残っているものの何となく不思議なパワーを感じていました。

何日か過ぎましたが、本当の処、今はぐったりして(笑)おります。


配信もあるようですので、自分でもまた観たいと思っています。何かのPower(?)を、感じ取れるのかな?


おまけ話ですが、2日目終了後打ち上げ時に、リクエストしてかけて頂いたのが、”The Art Of Noise”でした。ここで酔ってしまった(笑)


オーディエンスの皆さん、コロナ禍でのマナーを守ってくれてありがとうございます。


2022年3月11日 大江慎也



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<SET LIST>


2022.3.5 Shinya Oe & Super Birds


01. Visions Of Duskworld

02. Case Of Insanity

03. Good Dreams

04. Girl Friend

05. 風の中に消えた

06. Riding With The King

07. Rosie

08. Venus

09. Swayin’ In The Air

10. Sad Song

11. Get Happy

12. King Bee

13. Stream Of Fun

14. Go For The Party

15. I Dream


En.


16. Tonight

17. Go Fuck

18. She Broke My Heart’s Edge

19. 何処へ行こうか



2022.3.6 Shinya Oe & Super Birds


01. Case Of Insanity

02. Riding With The King

03. Rosie

04. King Bee

05. Girl Friend

06. I’m Waiting For My Man

07. Good Dreams

08. Why Does The Sun

09. Get Happy

10. In Nurnberg

11. Swayin’ In The Air

12. Sad Song

13. 何処へ行こうか

14. Let’s Rock

15. Stream Of Fun

En


16. Go For The Party

17. I Dream

18. She Broke My Heart’s Edge

19. Tonight


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<ALL PHOTO BY MARIKO MIURA>


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3/5、3/6 下北沢Flowers Loft

Shinya Oe & Super Birds 2days Live 配信決定しました!!

DAY1、DAY2ともに期間限定での有料配信となります。

視聴チケット:3000円

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LOFT LIVE STREAMING

Shinya Oe & Super Birds 

”Time Waits For No One”

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●DAY.1:2022.3.5 Flowers Loft

Shinya Oe & Super Birds

  大江慎也(Vocal&Guitar)

  ヤマジカズヒデ(Guitar)

  KAZI(Drum)

GUEST:穴井仁吉(Ba)

視聴期間:3月14日(月)21:00~3月20日(日)21:00

【DAY.1 チケット購入】

※チケットは、3月20日(日)18:00販売終了


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●DAY.2 : 2022.3.6 Flowers Loft

Shinya Oe & Super Birds

  大江慎也(Vocal&Guitar)

  ヤマジカズヒデ(Guitar)

  KAZI(Drum)

GUEST:細海魚(Key)/ 穴井仁吉(Ba)

視聴期間:3月21日(月)21:00~3月27日(日)21:00

【DAY2. チケット購入】

※チケットは、3月27日(日)18:00販売終了


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