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  • 執筆者の写真Nobuya Horiuchi

SUPER SESSION――百ヤマ穴Q+魚、「穴井仁吉64th Birthday Tour」開催!

PHOTO:佐藤哲郎




百々和宏(MO’SOME TONEBENDER)、ヤマジカズヒデ(dip)、穴井仁吉(TH eROCKERS)、クハラカズユキ(The Birthday)、細海魚(HEATWAVE)からなる「百ヤマ穴Q+魚」(ちなみに“Q”はクハラのこと)がこの5月27日(土)に大阪・堺「FANDANGO」、28日(日)に名古屋・池下「CLUB UPSET」を回るツアーに出る。ツアーのタイトルは「穴井仁吉64th Birthday Tour」("Maximum,Nikichi! 64th Birthday Tour")。本2023年1月26日(木)に東京・新代田「FEVER」で開催された穴井仁吉の生誕64年を祝うバースディライブの“全国展開”になる。


そもそも1月の「百ヤマ穴Q+魚」からして、“+魚”とあるように通常の「百ヤマ穴Q」にスペシャルゲストとして細海魚が加わるというお誕生日ならではの特別版である。単なる賑やかしや冷やかしではなく、確実に音に“細み”ではなく、”厚み”を加え、華やかさを添える。穴井仁吉のバースディを国民的祝祭(!?)へと変えていく――そんな試みでもあった。「穴井仁吉64th Birthday Tour」を今週末に備え、その予習・復習として、既にSNSなどで簡単に紹介しているが、1月26日(水)の“生誕祭”の模様を改めてリポートしておく。事務所からオフィシャルの写真やセットリストなども提供していただいた。これを読めば大阪や名古屋に行きたくなること、請け合い。「百ヤマ穴Q+魚」にとっても初のツアーである。是非とも大阪や名古屋でも盛り上がってもらいたい。

 

 

この日(1月26日のこと)、穴井仁吉はビートルズの「When I'm Sixty-Four」に乗って、登場してきた。そう、穴井は1959年1月26日生まれ、64歳になった。実はこの日、64歳になったミュージシャンは彼だけではない。穴井自身もMCで触れたが、「赤道小町ドキッ」などのヒットでお馴染みの山下久美子、THE STREET SLIDERSのHARRYこと、村越弘明も1959年1月26日生まれ、当たり前だが、ともに64歳になっている。山下は64歳にしてこの4月26日に初のジャズアルバム『Jazz”n”Kumiko』をリリース、HARRYは64歳にして初のSTREET SLIDERSの再結成公演をこの5月3日(祝)に日本武道館で開催。彼らは8月に北海道・石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージで行われる野外フェス「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2023 in EZO」へ出演し、9月からツアー「ROCK'N'ROLL」に出る。いずれにしろ、新しいことに挑み、いい意味で世間を騒がせている。勿論、このところの穴山淳吉を始め、アカネ&トントンマクート、Eli and The Deviants、山部YAMAZEN善次郎&The 幌馬車など、穴井仁吉の八面六臂の活躍は説明不要。ご存知の通りだろう。還暦を過ぎても変に落ち着くことなく、お盛んである。嬉しい限りだ。



「百ヤマ穴Q」(今回は+魚)の4人が揃うのは2年ぶりらしいが、このプロジェクト、各メンバーがオリジナル、カバー問わず、曲を持ち寄り、このメンバーで演奏するというもの。いわゆる福岡ゆかりのミュージシャンによる“SUPER SESSION”と言っていいだろう。



百々は、カバーはジョニー・サンダース(「Get off The Phone」やエルビス・コステロ(「Pump It up」)、オリジナルは「ロックンロールハート(ネヴァー・ダイ)」などを披露。ヤマジは、シナロケ(「Stiff Lips」)やピンクフロイド(「Lucfer Sam」)、クーラーシェイカー(「Hush」)のカバーを演奏している。全員ではダムド(「Neat neat neat」)、ストゥージーズ(「TV Eyes」)、ドアーズ(「Light My Fire」)、勿論、説明不要のTH eROCKERS(「可愛いアノ娘」)やTHE ROOSTERS(「C.M.C.」)、THE BATTLE ROCKERS(「セルNo.8」)のナンバーも惜しげもなく披露する。いわゆる誰もが知るナンバーが曲によってはそのまま(変えようもないものもある!)、曲によっては「百ヤマ穴Q+魚」のナンバーとして華麗なる変貌を遂げていく。



名曲を掘り起こしつつ、その根幹を改ざんすることなく、いまという時代性を加味する。2023年の“必聴曲”としてお色直しを施す。この“SUPER SESSION”、あまり作品として留められてはいないものの、この腕に覚えのあるものの野合の如く、ライブシーンでは活発に行われている。贔屓目な見方かもしれないが、福岡関係のミュージシャンにその傾向が強いように感じる。見逃してしまったが、同じくヤマジが関わる「JUST FOR ONE DAY 」(近藤智洋+ヤマジカズヒデ+田渕ひさ子+中西智子+KAZI)などのセットリストを見ると、そんな風合いや肌触りを感じる。例えが古いが、日本におけるパンク、ニューウェイブ直前、クロスオーバーやフュージョンの時代のセッションに明け暮れ、他流試合が頻発した“クラス替え”の時期を思い出しもする。いずれにしろ、ちゃんとした教則となるべき名曲があってこそ、成立するものである。誰もが知る曲ゆえに聞くものもすんなりと入り込めるのではないだろうか。



この日は“誕生日スペシャル”(!?)。スペシャルゲストとしてイマイアキノブがアンコールで出演。デラニー&ボニー(「Groupie “Superstar”」)やヴェルヴェットアンダーグランド(「Waiting for the man」)などの名曲を披露しつつ、最後はTHE ROOSTERSの「TEQUILA」で大団円を締めるところが彼ららしい。



実は、この日、穴井の誕生日らしい華やいだ雰囲気を纏いながらもどこか、能天気な祝祭モードとは違い、メンバーの心の奥底に秘めるものもあったような気がする。それを再確認したのは百々和宏が雑誌『音楽と人』で連載中のコラム(泥酔ジャーナル第232号「ロング泥酔グッバイ」)を読んだからである。その理由が少し明らかになった。同コラムから一部引用させてもらう。


百々和宏 ロックンロールハート(イズネバーダイ)


           ―――――――――――――――――


2年ぶりのライブ、事前にリハもみっちりやって万全の体制で臨む、本番前に缶ビール1本で済ますのもワタシにとっては珍しい。

本盤中、ワタシの曲「ロックンロールハート(イズネバーダイ)」のエンディング、隣でベースを弾く穴井仁吉さんが突然「あかまこねばだ!」と叫んだ。

あまりに唐突で、あまりに早口で、あまりに絶妙のタイミングで、さっぱり意味が分からなかったので打ち上げの席で「アレ何だったんすか?」と質問した。

「ゴメンゴメン。なんか演奏中に感情が昂ってさぁ、思わず“鮎川誠ネバーダイ!”って叫んでしまったんよ。歌の隙間に無理矢理ねじ込んだけど、やっぱり邪魔やったね、ゴメンね!」

穴井さんは90年代後半にシナロケのメンバーだったので、鮎川さんとの関係も深い。

療養中の鮎川さんを想う気持ちと、その感情がワタシの曲で増幅されての行動だったと知り、穴井さんの優しさがビンビンに伝わってワタシは心底グッときた。


            ―――――――――――――――


どこか、鮎川のことが気になり、心配をしていた。シーナ&ロケッツの2022年12月31日(土)の「ニューイヤーロックフェス」の“出演”や本2023年2月6日(月)の頭脳警察との“共演”が鮎川の病気療養のため、相次いでキャンセルされてしまった。特に会話を交わさずともメンバーやスタッフ、オーディエンスに関わらず、鮎川さんの病状を心配しているという共通の思いもある。穴井が百々の曲中に叫んだ言葉を理解できず、そのままにしていたとしても、こんなインサイドストーリーを知ってしまえば、彼らの鮎川への思いに胸が熱くなるというもの。


しかし、鮎川はその日から数日後、1月29日(日)に膵臓がんのため亡くなってしまった(合掌)。そして2月4日(土)に「ロック葬」、さらに5月2日(火)に鮎川誠・追悼ライブ「音楽葬」が行われている。穴井、百々ともに「ロック葬」に出席し、「音楽葬」にも出演している。大きな喪失感を覚えたのは彼らだけではないだろう。


百々のコラムには“つい先日、FEVERの打ち上げで「鮎川さんを応援するために次のライブはサンハウスやシナロケのカバーを増やそう」てな話で盛り上がったばっかりだった”という言葉もあった。「百ヤマ穴Q+魚」の“次のライブ”がこの5月27日(土)大阪・堺「FANDANGO」、28日(日)名古屋・池下「CLUB UPSET」に行われる。サンハウスやシナロケのカバーが披露されるかわからないし、特に“追悼”や“トリビュート”などを銘打たないかもしれないが、彼らの演奏の中にどこか鮎川誠が生きていることを感じるものになるのではないだろうか。いずれにしろ、彼らは福岡のBEATの系譜を受け継ぎ、いまに伝える。「百ヤマ穴Q+魚」を地方で見られる機会はそうあるものではない。その機会を見逃さないで欲しい。




【百ヤマ穴Q+魚】

「穴井仁吉64th Birthday Tour」"Maximum,Nikichi! 64th Birthday Tour"


G、Vo 百々和宏

G、Vo ヤマジカズヒデ

B、Vo 穴井仁吉

Dr、Vo クハラカズユキ

Kb 細海魚


5/27(土)大阪・堺 FANDANGO


5/28(日)名古屋・池下 CLUB UPSET

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