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その後の“Two Punks”達「THE MODS Premium Acoustic Tour 2025 "REV REHAB AROUND"」

  • 執筆者の写真: Nobuya Horiuchi
    Nobuya Horiuchi
  • 6月22日
  • 読了時間: 12分

更新日:6月23日


ライブ写真・斎藤ユーリ


“コロナで2年、病気で2年”――と、森山達也は言った。コロナと突発性難聴(それ以前、2016年には半月板損傷と軟骨の炎症の治療のための延期と中止になっている)、THE MODSのライブは延期や中止が相次いだ。コロナに関しては森山が罹患したわけではないが、ライブハウスやコンサートホールなどは“三密”の名目で、コロナ発生の温床として、検温・消毒、マスク着用、健康状態の事前申告、ビニールカーテンの使用、客席の間隔を空ける、ワクチン接種……など、様々な対策が講じられたものの、彼らに限らず、ライブシーンは停滞した。漸くコロナが明けたかと思ったら森山の突発難聴で、THE MODSとしての活動は休止となる。その間、THE MODSとして4人で行ったライブは2022年7月9 日(土)に東京「日比谷野外大音楽堂」で開催した「THE MODS 40th ANNIVERSARY LIVE ENCORE」まで遡らなければならない。


同2022年11月、12月には名古屋、大阪、福岡、東京を回る全国4カ所、全8公演のアコースティックツアー「THE MODS Premium Acoustic Tour 2022 “DRIVE WAY JIVE”」が予定されていたが、森山の体調不良のため、公演は全て中止になる。森山は前述通り、突発性難聴と診断され、バンド活動はストップした。



昨2024年3月30日の森山の68回目の誕生日には東京・代官山「UNiT」で、療養中の森山へのエールとバンドの復活を待ち焦がれるファンのため、北里晃一(B、Vo)、苣木寛之(G、Vo)、佐々木周(Dr、Vo)というメンバー3人がゲストを迎えてイベント「THE MODSを止めるな!~Roulette Ball~」が開催された。盟友KOZZY IWAKAWA(THE COLTS、THE MACKSHOW)を始め、増子直純(怒髪天)、武藤昭平(勝手にしやがれ)、たちばなテツヤ(SPARKS GO GO)、TAISEI(SA)、高木克(ソウル・フラワー・ユニオン)、甲田“ヤングコーン”伸太郎、AKIRA(Luv-Enders)、Yama-Chang(THE COLTS)というTHE MODSを敬愛するミュージシャン達が集まった。イベント後半では森山からのビデオメッセージも会場で流された。イベントの模様は後日、Streaming+にて配信されている。



森山が北里、苣木、佐々木とともに4人で観客の前に立つのは昨2024年11月24日(日)に東京・鶯谷「東京キネマ倶楽部」で行われた「THE MODS SWITCH LIVE 2024 “REV REHAB”」と題したファンクラブ「SWITCH」の会員限定のライブまで待たなくてはならなかった。“REV REHAB”とは“回転数を上げてゆくリハビリ”という意味だという。“いきなりの爆音で飛ばすライブではなく、アコースティック・セットから少しずつ慣らしてゆければ”――と、同ライブの告知に書かれていた。同じく“このトライはTHE MODSにとって最大の試金石となるだろう。見届けて欲しい”とあった。


「東京キネマ倶楽部」で行われた2年4ヶ月ぶりのライブは、869日ぶりの4人でのステージになった。会員のみにという限られた観客の前で行われたもののため、同ライブの模様はオフレコではないものの、あまりリポートされることもなかった。実際、その場で見たライブは、慣れないイヤモニ(イヤーモニター)と格闘しながらも少しずつ、回転を上げ、アコースティック主体の座りのライブながら会場は熱気を帯び、その場にいるものにTHE MODS健在を印象づけるものだった。森山自身はステージで“完全復活ではない”と強調していたが、そのライブは上々のもので、これまでも時折、開催したアコースティックライブと遜色がなく、いかにもTHE MODSらしいものだった。改めて復活ライブを望む声がロックシーンに溢れる。



同ライブの“手応え”が半年後、大阪・福岡・名古屋・東京を巡るツアー「THE MODS Premium Acoustic Tour 2025 “REV REHAB AROUND”」を森山達也を始め、メンバーやスタッフに決意させた。改めて日程を書き記すと、5月17日(土) 大阪 「なんばHatch」、5月24日(土) 福岡 「UNITEDLAB」、 5月31日(土) 名古屋「 DIAMOND HALL」、6月5日(木) 東京・恵比寿「LIQUIDROOM」になる。



THE MODSの長きに渡る不在、ロックシーンの飢餓感は日毎に高くなる。そんな欲求に応えるべく、決行された「THE MODS Premium Acoustic Tour 2025 “REV REHAB AROUND”」。昨年の東京でのファンクラブ「SWITCH」限定ライブ同様、アコースティックな“リハビリライブ”ながら今回はファンクラブ限定ではなく、一般発売もされる。しかし、ファンの熱狂ぶりは高く、売り出されたチケットは全会場とも一瞬にしてソールドアウトになる。“KIDS”達はTHE MODSをそれだけ待ち焦がれていたーーその証拠ではないだろうか。


このツアーでは“吉報”も飛び込む。5月24日(土)の福岡「UNITEDLAB」でのライブ後、元SONHOUSEの浦田賢一の結成したSHOTGUNのメンバーだった白井哲哉&俊哉の白井兄弟が経営するライブバー「音処しらいんがた」で“After Party”が行われている。白井兄弟、その日、久留米でシーナ&ロケッツの公演を終えた川嶋一秀が同所で合流して、セッションも行われたと、THE MODSのSNSに報告されている。森山は「今夜 決めよう」や「I don't wanna talk about it」、「Route 66」、「Walking the dog」、「Boom Boom」、「Bring it on home to me」などを歌ったという。


恐らく、その場にいたかったと、誰もが思かもしれないが、逆に言えば”リハビリライブ”とは言え、ライブ後もそれだけのことができるのであれば“本編”はもっと期待していいと言っていいだろう。ライブへの期待は嫌がおうでも上がるというものだ。




そうして迎えたツアーの最終日、6月5日(木)の東京・恵比寿「 LIQUIDROOM」。会場は既にソールドアウト。会場いっぱいに観客が詰めかけている。開演前からモッズコールが鳴り響くが、いつもと違うのは客席がオールスタンディングではなく、席が用意してあること。メンバー自身が着席しての歌唱や演奏なので、当然、客席には椅子がある。同所にしては珍しい光景だが、“立ち”のコンサートではないので、仕方がないだろう。


森山達也(Vo、G)、北里晃一(B、Vo)、苣木寛之(G、Vo)、そして佐々木周(Dr)の4人がステージに登場する。いつもと違うのは、佐々木は当然として、4人が椅子に座っていること。この日、オープニングナンバーとして披露されたのは「DREAM ON」である。同曲は1985年にリリースされた5枚目のオリジナルアルバムにして、THE MODSが出演した映画『夜のハイウェイ』(THE MODSというロックバンドと2人の少年との交流を描いた作品で“ティーンネイジャーの成長”がテーマ。出演は木村一八、高木沙耶、永瀬正敏)のサントラを兼ねるアルバム『BLUE -Midnight Highway-』に収録されている。“Dream On――夢を見続けろ”と歌われるのだ。そしてEPIC・ソニー、スカーフェイス(徳間JAPAN)を経て、アンティノスレコード移籍第一弾にして、『NAPALM ROCK』(1989年)以来のロンドン録音アルバム『KILBURN BRATS』(1995年)に収録された「LESS THAN ZERO」を畳みかける。同アルバムはスカーフェイスレーベルを解散させ、レコード会社、事務所など、すべてをゼロにしてフラットな状況からスタートした作品だ。「LESS THAN ZERO」は“踏み出さなけりゃ意味がない”と歌われる。アコースティックなサウンドながら鋭角的な言葉が突き刺さる。

TATSUYA MORIYAMA(Vo)
TATSUYA MORIYAMA(Vo)

そして『Blue-Midnight Highway』のタイトルトラックとでもいうべき「夜のハイウェイ」が続いて歌われる。「夜のハイウェイ」は福岡時代から歌われてきたTHE MODS流のポップな名曲でもある。


実は『BLUE -Midnight Highway-』は、特別なアルバムでもある。前述通り、THE MODS自らが出演する映画のサントラだが、ある意味、映画のテーマに寄り添いつつ、THE MODSのポップさを思い切り表現した作品でもある。EPIC・ソニーの創始者にして、現在もTHE MODSに関わる丸山茂雄が彼らのデモテープを聞き、いつか、リリースしたいと思ったポップな名曲(「夜のハイウェイ」、「夜が呼んでいる」と並ぶ、俗に“夜シリーズ”の名曲と言われる「END OF THE NIGHT」)もレコーディングされている。同曲は、完成するものの、その出来にメンバーは満足できず、文字通り、幻の名曲になってしまった。かつて、森山は“THE MODSはどんなパンクバンドよりパンク。どんなポップバンドよりもポップ”と言っていた。彼らをメジャーデビュー前から知っていた福岡のロックファンなら納得だろう。誤解を恐れずに言えば、どんな歌謡ポップスや歌謡フォークにも負けない、とてつもないポップさがあるのだ。


アコースティックなサウンドで歌われることで、爆音にまぎれ、その骨格が見えにくかった楽曲の良さ、優れたメロディーが改めて浮き彫りにされ、それらが際立つ。同時に森山の歌が歌詞を含め、すんなりと直截に心と身体の奥底に入って来る。


4曲目は同じく『KILBURN BRATS』(1995年)に収録された「WAS 17」が披露される。同曲も“夜のハイウェイ”のテーマとリンクする。“ティーンエイジブルー”を歌ったものだ。


続けて「JET LAG BLUES」(1986年『CORNER』)、そして苣木のヴォーカルをフィーチャーしたワークソング「WORK HARD LITTLE PAY」(2007年『FREED』)が披露される。DUDE TONEとしても活動する苣木、今年1月には百々和宏(MO'SOME TONEBENDER)、ヤマジカズヒデ(dip)、穴井仁吉(TH eROCKERS)、クハラカズユキ(The Birthday)、細海魚(HEATWAVE)などが参加する“モモヤマ穴Q魚”のライブにゲスト出演するなど、ソロ活動も活発。ヴォーカルにも磨きがかかるというもの。

HIROYUKI CHISAKI(G)
HIROYUKI CHISAKI(G)

そして1988年に地元・博多の「ヒーコンスタジオ」でレコーディングされ、山部“YAMAZEN”善次郎や藤井尚之など、博多の友人ミュージシャンが多数参加したホームメイド感覚のプライベートなアルバム『EASY COME EASY GO』に収録されたダウントゥアースなバラッド「ANGEL」を披露する。同アルバムは“HOME”でのレコーディングにメンバーもレイドバックして、バック・トゥ・ルーツなサウンドが特色だった。

KOICHI KITAZATO(B)
KOICHI KITAZATO(B)


同曲を終えると、メンバーの4人に2人の仲間が加わる。JAH‐RAH(Per)と、KOZZY(G)である。JAH‐RAHはソウルフラワーユニオンや麗蘭のメンバーとして活動しつつ、奥田民生や甲斐よしひろ、LOVE PSYCHEDELICO、KEN YOKOYAMAなどのサポートでお馴染み。KOZZYは説明不要だろう。KOZZYこと、岩川浩二は“ROLLIE”から“THE COLTS”、“ザ・マックショウ”まで、THE MODSとの付き合いは長い。THE MODS FAMILYの一員だ。森山・KOZZYという師弟コンビニよるバスキングユニット「THE GANG BUSKERS」を結成。2018年には福岡の糸島で開催された“Sunset Live2018”にも出演している。2020年には、コロナ禍の中、森山にとって1985年のソロ活動以来35年振りの新作になるソロ名義のマキシシングル「GET YOURSELF」(アルバム名義は“T.MORIYAMMER”になる)もプロデュースした。

SHU SASAKI(Dr)
SHU SASAKI(Dr)

サポートメンバーを加えて、労働者階級への応援歌「WAH WAH」(1993年『TIES』)、この世界への意義申し立て「やってられないぜ」(2020年にリリースした4曲入りマキシシングル「DRIVE WAY JIVE」に収録)と、軽快でいてチクリとくるナンバーを連発。サポートメンバーによって、音に華やかさと遊びが施される。さらにTHE MODSの初期のナンバーで『HANDS UP』(1983 年 )に収録されたメロウなナンバー「HONEY BEE 」、北里をフィーチャーしたパンクチューン「BLACK BLITZ BOY」(北里晃一が1988年にリリースしたソロシングル)、「今夜決めよう」(1996年『ZA MOZZ』)などを披露する。自らの青春時代を懐古しつつ、それはKIDS達への応援歌でもある。そして、森山達也が描く“トゥルーロマンス”とでも言うべきナンバー「クラレンス+アラバマ」(2010年『SHOTGUN SQUALL』)が披露される。その歌を聞けば、映像が浮び、台詞が飛び込んでくるはず。“ストリートのストーリーテラー”の面目躍如だろう。

JAH-RAH(Per)
JAH-RAH(Per)

“本編最後”のナンバーを歌い終えると、メンバーはステージから消える。そして数分後、4人のメンバーと2人のサポーターがステージに戻ってくる。


そして演奏されたのは『LOOK OUT』(1982年)に収録された「HIT THE TOWN」。この街をたたけと歌われる。“最初のアンコール”では、1981年にリリースされたデビューアルバム『FIGHT OR FLIGHT』 に収録されている「不良少年の詩」が放たれる。観客は“待ってましたー!”とばかり、歓喜の叫びを上げる。

KOZZY(G)
KOZZY(G)


そして“2回目のアンコール”はメンバー4人で「LIVE WITH ROCK‘N’ROLL」(2004年『LIVE WITH ROCK’N’ROLL』)が歌われる。「Two Punks」や「LOOSE GAME」に連なるナンバーだ。THE MODSの改めての不退転の決意表明ではないだろうか。


続いて「激しい雨が」を観客に浴びせかける。さらに2021年、コロナ禍に放たれた「涙のワンウェイ」(マキシシングル「READY TO ROCK」に収録)を畳みかける。このブロックでTHE MODSは彼ららしい激しさと熱さを込め、観客の心と身体を射抜いてみせる。この3曲だけは4人で演奏するという決意や覚悟を感じさせるのだ。



同曲を終えると、4人はステージから消える。しかし、数分後、メンバーの4人はサポートの2人をともないステージに三度、現れる。“3回目のアンコール”を観客は歓喜の拍手と歓声で迎える。


演奏されたのはザ・クラッシュがカヴァーしたことで知られるソニー・カーティスの「I Fought the Law」。同曲をTHE MODS流にカヴァーしている。観客にはお馴染みのスタンダードになっている。ちなみに同曲は『NAPLM ROCK』(1989年) 収録の「HEY!! TRAVIS」のリテイクシングルに「S・O・S」と「I FOUGHT THE LAW」のライブヴァージョンとしてカップリングされた。



さらに『HANDS UP』(1983年) に収録された「GO-STOP BOOGIE」を演奏する。行くか、止まるか――行っては止まりつつ、しかし進んでいく――そんな“BOOGIE”がTHE MODSらしい。


体調は一進一退ながら――森山は“秋から冬にかけて“立ちのライブをやりたい”と、この日、観客に告げている。「完全復活を宣言」などではないが、その日が近いことを予感させる。アンコールは「GO-STOP BOOGIE」で締めたが、観客にとって、何よりも嬉しい「報告」(「言質」と、勝手に解釈しておこう!)を聞けたライブではないだろうか。



同時にTHE MODSのハードでパンクな面だけでなく、ポップでカラフルな面を再確認させるライブでもあった。“リハビリライブ”といいつつも単なる“お試し”などではなく、アコースティックによる楽曲の構造と歌詞と歌の関係性を改めて提示してみせた。また、その歌は映像と物語を喚起する。彼らのルーツを辿りながらも彼らの曲が持つ“イノセンス”を露わにしている。ライブを目の当たりにすると、様々な映像が浮かぶ。幸いなことにデビュー前の彼らを博多で見る機会に恵まれている。森山は45年前、親不孝通りの喫茶店で、“俺達は失敗しないと思います”と、目を輝かしながら話してくれた。



THE MODSは昨2024年12月にメジャーデビュー前の博多時代を懐古した書籍『Hey! Two Punks The Mods : The Early Days 博多疾風編』を上梓した。THE MODSデビュー前夜までの知られざる物語を披歴している。何か、この日のライブが同書と地続きであることを感じる。まだ、THEMODSがTHE MODSになる前の時代、同時にそれはいまも大事にしている、THE MODSの原石の時代でもある。単なる懐古趣味ではなく、原点回帰しながらも現在を見つめ、未来を思い描く――。



まさに青天の霹靂である。オールスター明けだと誰もが思っていたら6月15日(日本時間16日)、ドジャーズは球団公式X(旧ツイッター)を更新し、同月16日(同17日)の本拠地で開催されるドジャーズVSパドレス戦で大谷翔平が先発登板すると発表。翌日、2シーズンぶりに“投打の二刀流”での復帰を果たした。1回28球、1失点ながら、最速161.2キロを記録している。打者として同点打と勝ち越し打を放ち、ドジャーズを勝利に導いている。ドジャーズでの投手としてのデビュー。663日ぶりの二刀流の復活、投手復帰である。まさかの展開だが、ある意味、森山の“リハビリライブ”は、大谷のライブBP(Live Batting Practice――とは、実戦形式の打撃練習を指し、投手が実際の打者を相手に投球する練習のこと)を経ての実戦デビューに近いのではないだろうか。


森山も終演後、やってみなければわからない、このライブがどれだけの身体の負担や負荷が掛かるかわからないが、とりあえず、やってみるしかないと言っていた。大谷はライブBPで負担がかかるなら実戦でかかる方がいいと言っていた。ライブから数日後に更新されたTHE MODSのSNSには大きな異変や不調はなかったようだ。完全復活は近いと書くと、誇大広告なるかもしれないが、この秋から冬にかけて、彼らが改めて動くことになりそうだ。その前にも嬉しいニュースが飛び込むかもしれない。THE MODSの完全復活を心待ちにする。

 
 
 

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