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FUKUOKA BEAT REVOLUTION

Dragons Come Alive!――アカネ&トントンマクート、飛翔する“九州リアルファーストツアー”「SUMMER FEELING!」同乗記!

既に「福岡BEAT革命」のFBページで、ライブの翌日に“速報”という形でリポートを掲載しているが、アカネ&トントンマクートの初の本格的な九州ツアー“アカネ&トントンマクート SUMMER FEELING!”の模様を改めて報告しておく。未公開写真や未掲載情報を満載している。福岡・長崎・熊本という3か所のライブをまとめたため、長くなるが、お手隙の時にでもご覧になっていただければ幸いだ。このツアーの成功は当然、多くの方の決意と行動と努力の賜物だが、そこには人智を超えた何かが、関わっていたのではないだろうか。


親不孝通りの粋な大人達を魅了するアカネ&トントンマクートの音の魔法 “アカネ&トントンマクート SUMMER FEELING!”6月28日(金)福岡「Bar Bassic.」 DAY1


アカネ&トントンマクートを始め、Eli and The Deviants(イーライ・アンド・デヴィアンツ)(下山淳・ヤマジカズヒデ・穴井仁吉・KAZI・武田康男)、貝生比良(下山淳・武田康男・岡本雅彦・KAZI)、仲野茂バンド(下山淳・仲野茂・岡本雅彦・梶浦雅弘・竹内理恵)、BIC3(下山淳・山本久土・イマイアキノブ)……など、様々なプロジェクトやバンドを同時稼動させる下山淳(G、Vo)。その中で、穴井仁吉(B、Vo)、延原達治(G、Vo)、茜(Dr、Vo)と組んだアカネ&トントンマクートは特別な存在かもしれない。


この5月19日(日)に所沢「モジョ」で開催された『下山淳 生誕祭』がアカネ&トントンマクート(茜・下山淳・穴井仁吉・延原達治)をベースにスペシャルゲストにDr.kyOn(Kb、G、Vo)と澄田健(G、Vo)を迎えて行っている。


下山のようにキャリアのあるミュージシャンであれば、時代毎に縁のあるアーティストを綺羅星のように集めるということもできたかもしれないが、敢えて自らが考える音楽的な質にこだわった――そんな座組ではないだろうか。アカネ&トントンマクートへの絶対的な自信と信頼の現れかもしれない。コロナが明けたとはいえ、まだ、満漢全席は早い。古希、70歳の生誕祭まで残しておくというのもあるだろう。



今回の福岡、長崎、熊本という3か所を巡るツアー“アカネ&トントンマクート SUMMER FEELING!”。福岡・小倉はアカネ&トンとマクートではなく、穴山淳吉で回っている。また、福岡・熊本は同じくアカネ&トントンマクートではなく、Eli and The Deviantsのツアーで回っている。彼らにとって、今回の福岡・長崎・熊本を巡るツアーはアカネ&トントンマクートの初の九州ツアーになる。その契機だが、最初に長崎の大村ありきだったという。アカネ&トントンマクートを長崎・大村へ招聘した同所の「クシマ音楽社」の方がコロナ禍以前からいつか、下山淳を大村へ呼びたいと考えていたそうだ。同社は地元・長崎でライブイベントなどの企画をしているが、ライブハウスなどを運営しているわけではなく、自らが素晴らしいと思う音楽を大村に紹介するため、会場なども手配してイベントを開催している。シンガーソングライター、エッセイストとして活躍する豊田勇造などのイベントも行っていた。同社の代表もミュージシャンとして活動している。


そのクシマ音楽社の思いに下山が応える形で、以前からアカネ&トントンマクートや穴山淳吉、仲野茂バンドなどのライブを行っている福岡の「Bar Bassic.」、イーライ・アンド・デヴィアンツでライブを行った熊本の「ONE DROP」、そして長崎・大村の「TORI-K」という3か所でのライブが決定した。それを作れば、彼らはやってくる――ではないが、その思いと、それを実現させる行動力が“SUMMER FEELING!”を実現可能なものにした。



そのツアー“SUMMER FEELING!”の初日が6月28日(金)、福岡のライブハウス「Bar Bassic.」で開催された。同所に関しては説明不用、元HEATWAVEの渡辺圭一がオーナーを務める福岡の音楽愛好者の夜の社交場である。前日もふらりと大江慎也が会場に現れ、セッションに参加したという。この日も仲野茂バンドで活動をともにする梶浦雅弘も顔を出していた。



会場は立ち見もでる盛況ぶり。同所でのアカネ&トントンマクートのライブは久しぶりになる。待ち焦がれたファンも多いようだ。開演時間の午後7時30分を10分ほど過ぎて、彼らが登場する。下山淳が歌うニール・ヤングの「ライク・ア・ハリケーン」からスタートする。アカネ&トントンマクートでは度々、演奏してきた同曲だが、その音と歌の重厚さと優雅さに気圧される。同曲に続き、延原が歌う山口富士夫の「からかわないで」、そして穴井が歌う「GOT FEEL SO GOOD」、さらに茜が歌う「TEMPTATION」と続く。歌のバトンを引き継ぎ、リレー形式で曲が披露される。全員、演奏ができて、全員、歌えるというアカネ&トントンマクートらしい、盤石な滑り出しだろう。



今回は誰かとは違い(笑)、急な曲順や曲目の変更はないので、セットリストをそのまま掲載することもできるが、“速報”の時点では見る方にネタバレを防ぐため、敢えて未公開、全公演終了後に公開することにした(最終公演のセットリストを文末に掲載している)。これまで以上にバラエティ豊かな曲目、そして意外な選曲に驚くかもしれない。


基本的にオリジナル、カバー問わず、すべてがアカネ&トントンマクートの歌や演奏になるのだが、マディ―・ウォーターズのブルースの古典「ローリング&タンブリン」のハードなエレクトリックサウンドには圧倒された。一瞬、暴動クラブか、と思ったぐらいだが、アカネ&トントンマクートの新境地かもしれない。彼らの引出しの多さと懐の深さを再確認する。いい意味で私達へ驚きを与えてくれる。



ライブそのものは第1部と第2部を合わせ、約3時間の熱演。途中、“穴井劇場”もありつつも中だるみなどは一切ない。いい意味での緊張感を維持している。アカネ&トンマクートというバンドの成長と成熟を改めて感じさせる。彼らが奏でるロックンロールシンフォニーは週末の親不孝通りの粋な大人達を虜にする“音の魔法”がある。「Bar Bassic.」という大人の社交場に相応しいものだったのではないだろうか。“大人のロック”という言葉があるとしたら、アカネ&トントンマクートの音楽が相応しいかもしれない。




終演後は顔見知りの仲間たちが同所に集まって来る。打ち上げを兼ねた夜の会合は深い時間まで続いていく。きっと、気の置けない仲間たちの意味のあるような意味のないような会話は明日への活力源ではないだろうか。




下山淳が長崎・大村へやってきた――願いは叶う! “アカネ&トントンマクート SUMMER FEELING!” 6月29日(土)長崎・大村「TORI-K」DAY 2



そして、翌日、6月29日(土)は長崎の大村「TORI-K」でアカネ&トントンマクートのサマーツアー“SUMMER FEELING!”の2日目が開催される。開場は午後6時、開演は午後7時になる。



この日は福岡から大村へは車での移動になる。福岡で大型車をレンタルして、土地勘のある穴井の運転で同所を目指す。出発前には“エネルギー注入”を怠らなかった。高速に乗る前に福岡の呉服町のうどん屋で福岡といえばうどんということで、うどんを胃袋へかきこむ。敢えて店名は上げないが、写真を見ていただければわかるだろう。


大村へは福岡市内から太宰府ICを過ぎ、鳥栖JCT、武雄JCTを経て、大村ICを降りると、大村の繁華街はすぐである。1時間30分ほどだろうか。休憩なども含め、2時間ほどで着く。大村へは新幹線や在来線、西鉄バスなど、いくつもの足がある。思いの他、近いところだ。長崎は大村湾を挟む形で位置している。佐賀寄りでもある。


メンバーは昼過ぎには大村に到着し、駅前の地元の方が行きつけという食堂で長崎名物「ちゃんぽん」を食べている。福岡でうどん、長崎でちゃんぽん、あくまでも食の王道を歩む、アカネ&トントンマクートだ。


大村駅から徒歩10分ほどの長崎街道大村宿と書かれたアーケイドの側にその店「ミュージックバー TORI-K(トリケイ。店長の愛称から店名がつけられたという)」はあった。普段はジャズ、フュージョン系の演奏が多いらしく、8月にはナルチョこと、スーパーベーシスト、鳴瀬喜博が出演する。元々、長崎はジャズが盛んなところで、様々なジャズバーやライブハウスがある。イベントなども県内では積極的に行われているという。



会場はこの日を待ちわびた多くの方で埋まる。客席だけでなく、立ち見も出ている。Z世代と思しき青年期にTHE ROOSTERZを体験して、彼らのファンになった方も多いそうだ。同世代だけでなく、それ以前にいい音楽を聞きたいという方も多く、そんな音楽的な欲求が同所へと足を走らせたのだろう。開演時間の午後7時を過ぎ、観客の歓声と拍手の中、アカネ&トントンマクートのメンバーが登場する。この日のオープニングナンバーであるニール・ヤングの「ライク・ア・ハリケーン」を下山が演奏しだすと、一瞬にして会場の空気が変わり、興奮と熱狂の度合いが増していく。続いて延原が山口富士夫の「からかわないで」、穴井が「GOT FEEL SO GOOD」、さらに茜が「TEMPTATION」を歌い継いでいく。


詳しいセットリストはツアー終了後に公開する予定だが、今回のツアーはこれまでアカネ&トントンマクートでは披露されていなかった曲も披露されている。ストーリーズの「ブラザー・ルイ」はリハーサルなどでは度々、演奏されていたが、ライブでは演奏されていない。また、意外な選曲になるテンプターズの「神様お願い」は下山と延原のデュオでは披露されていたが、アカネ&トントンマクートでは初公開になる。二人とも実はGSが好きで、いつかやってみたかったナンバーだそうだ。


この日を思うと、いくつもの光景が去来するが、やはり下山淳が常に嬉しそうに笑顔で演奏したことではないだろうか。そして穴井劇場だけではなく、下山劇場も飛び出す。2メートルの大魔神と140センチの彼女との話には東北に伝わる民話のような喉かさと叙情があった(!?)。


この日に関しては、ショーは終わらない、アンコールは何度も続いていく……という感じだろうか。文字通り、“いつもより長くやっています”状態。大村の気持ちに応えたいということだろう。その演奏に自然と熱と気が籠もる。このパワーは恐れ入る。その源は何だろうか。それはきっと、福岡から大村へと旅発つ朝に食べた福岡のうどんと、大村について差し入れられた同所の名物、大村の塩ゆで落花生ではないだろうか。彼らの演奏を後押しする。そしてその演奏は大村の人達を後押しする。地域交流などというと、大袈裟かもしれないが、音楽を通して、人と人が繋がる。某メンバーから“移住宣言”も出たくらいだ。


ライブが終わって十数分後、このライブを仕切ったクシマ音楽社の代表は興奮気味にこう語る。


「アカネ&トントンマクートは大村で演奏するのは初めてでしたが、予想以上に盛り上がりました。正直、びっくりしています。東京からしたら長崎の大村という“地の果て”に下山さんが来ていただき、歌も演奏も最高のものを見せてくれました。普段より2割増し、20%以上のボリュームで、がつんとやってくれました。感謝しかありません」


彼は「福岡でバンド活動をやっていて、その時に『ベーシック』さんとご縁が出来て、あそこで下山さんがライブを行った時に下山さんを呼びたいな、呼びたいなをわかってもらえるように何度もアピールしました。コロナ禍前、2019年だったと思います。きっかけは長崎で活動しているバンドに本物のバンド、生のライブでしか味わえない化学変化といいいますか。そういうものを体感させたかったのです。この日はバンドやっている方だけでなく、同世代の人も来てくれました。流石、分かってらっしゃるからコール&レスポンスも言わなくも自然と起こる。いろんな人たちに見せてあげたいというのを改めて思いました」



実はザ・ルースターズ(THE ROOSTERZ)は『GOOD DREAMS』(1984 年)を出した時にツアーで、長崎に来ているという。そのライブ音源も地元の放送局でも流れたそうだ。「長崎は“Z”世代なんです」という。いうまでもなく、Zのキーマンは下山淳である。不思議な縁ではないだろうか。


クシマ音楽社の代表の思いが形になったのがこの日、2024年6月29日(土)だったのだ。




熊本「ONE DROP」という場所と竜神の導きで名曲達がさらに光りと輝きを増す“アカネ&トントンマクート SUMMER FEELING!” 6月30 日(日)熊本「ONE DROP」 DAY 3




6月30日(日)の早朝、アカネ&トントンマクートのメンバーは大村湾を臨む、絶景の中にいた。この風景は大村でのコンサートを主催したクシマ音楽社の方の“大村フィルムコミッション”、または“大村ロケーションサービス”とでもいうべき、情報力と機動力がなければ撮影することはできなかっただろう。大村湾は外海ではなく、内海であることは知っていても大村の海がどんなものか知る人は少ないはず。そんな大村の海を知らしめるため、海の側で海を背景にアカネ&トントンマクートの撮影を考えていた。きっと、それがこの旅を象徴する“決めカット”になると思っていたからだ。ただ、これはと言うと場所が見つからず、思い悩んでもいた。メンバーが宿泊した大村のホテルは海に面していたが、残念ながらそこで撮影してもこの旅を象徴するものとはなりにくい。この日の早朝、お見送りのためにロビーに来ていたクシマ音楽社の方に相談したところ、ホテルの近く、車で数分のところに絶好の場所があることを教えていただいた。ロケなら任しとけ、と、車の先導もしてくれる。実に頼もしい。5分ほど、行くと、その場所はあった。



大村競艇場(正式名称は「大村市モーターボート競走場」。施設名の通称は「BOAT RACE大村」)。その周辺の島や浜で、15分ほどで撮影している。玖島崎の龍神社は生業繁栄の神が宿る島で、実際、メンバーは参拝もしているのだ。


ここ数日の荒天のため、雲一つない快晴とはいかないが、黒い雲が天を飛翔するがごとく、また、強風で煽られた波頭は激しく叫びを上げる。同景色が同所を代表するものかわかないが、この日、6月30日(日)の午前中にそんな雲と風と波の動きを記録する。荒ぶる波頭に立つ4人の姿をしっかりとレンズに収めている。



メンバーは同所から高速に乗り、熊本を目指す。クハラ音楽社の方によると、地元の方は島原(島原港)からフェリーに乗り、熊本(熊本港)へ渡り、そこから下道を走るというルートを使用するらしいが、流石、風が強く、欠航の可能性もある。距離的に遠回りになるが、時間的には早い高速利用が安全で妥当だろう。大村から熊本までは2時間ほどである。



この日の会場の「ONE DROP」入りの前、穴井仁吉はシーナ&ロケッツ時代の盟友、金崎信敏が運営する「STUDIO NOOK」を訪ねている。同所は「熊本震災」に見舞われるが、それから5年の歳月が流れ、2021年に復興を果たしている。鮎川誠、穴井仁吉がお祝いに駆けつけ、鮎川誠などとこけら落としを記念するルーフトップコンサートをしたところでもある。



熊本の「ONE DROP」は熊本駅から熊本市電 を利用し「健軍町駅」へ。そして同駅から徒歩15分ほどのところ。熊本市の中心部から離れた、いわゆる郊外だが、大型の量販店やフランチャイズの飲食店が集中している。車利用が便利で九州自動車道 「益城熊本空港IC 」からは5分ほどのところにある。


熊本市は半導体の受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が新工場を建てたところで、海外からの転入者が急増して話題になっている。今後もその兆候が顕著になると、様々なメディアで取り上げられているのだ。



「ONE DROP」はオーナーの花香竜也のこだわりのライブバーで、その内装から外装、家具調度、インテリアまで、随所にこだわりが現れている。ライブやイベントなどにも拘りがあり、彼らしいラインナップになっている。ライブだけでなく、アートや映画、映像など、独自の発信するイベントなども積極的に行っている。下山淳は2022年8月にEli and The Deviants(イーライ・アンド・デヴィアンツ)、延原はTHE PRIVATESなどで度々、出演している。




この日は日曜日にも関わらず、開演時間は通常通り午後7時30分である。同時間を5分ほど過ぎ、アカネ&トントンマクートの熊本「ONE DROP」での最初のステージが始まった。1階だけでなく、2階にも観客が入る同会場は1曲目から興奮状態。延原がMCで語ることになるが、この日は熊本中から乗りのいい観客が集まったらしい。福岡、長崎、熊本と3連荘する方も少なくない。その熱心さに頭が下がる。今回のツアーは毎回、この曲、ニール・ヤングの「LIKE A HARRICANE」がオープニングを飾った。



今回のツアーで初めて披露されることになったマディ―・ウォーターズの「ROLLIN’&TUMBLIN’」。ロッキングブルースの名曲として、エリック・クラプトンやジェフ・ベック、ジョニー・ウィンターなど、数多くのギターヒーローがカバーしてきた。その同曲に敢えて挑んでいる。彼ららしいカバーで、ブルースに根付きながらも同時代性のあるハードでエレクトリックなサウンドを纏う。火を噴くようなギターの応酬は特筆に値する。かつてクリームやツェッペリンなどがアメリカの深南部やシカゴのブルースを独自の解釈でカバーを超え、自分のオリジナルとしてきたが、その道筋を思い出す。二人のワクワクが伝わってくる。彼らのハードエッジなサウンド、もっと聞きたくなる。同タイプの楽曲が増加するかわからないが、何か、始まりを予感させるナンバーだろう。実は最初にリハーサルした段階から彼らは既に楽しそうだった。



そして、「SO LONG」。ご存知の通り、昨2023年4月にリリースされたROCK'N'ROLL GYPSIES(ロックンロールジプシーズ)の7年ぶりの5枚目のオリジナルアルバム『V』に収録された下山淳のオリジナルである。“時の流れに君は呑み込まれてゆく”や“So long Down by the river”などのフレーズが下山らしく、少しやるせなくなるが、それでいてどこか“さようなら”ではなく、"またね"ということで希望を繋ぐような歌だろう。楽曲はアルバムに録音されて完結するものではなく、ライブで歌われて完結するものだろう。歌い続けることで育ってもいく。ジプシーズそのものの活動は昨2023年11月の岡山でのライブ以降、行われていない。活動再開がいつになるか、わからない。その成長の機会は失われている。そんな危機を救い、同曲が育つ機会になるのがアカネ&トントンマクートのライブではないだろうか。彼らの演奏と歌で同曲を何度か聞いているが、アルバムのオリジナルからカバーされることで、楽曲が少しずつ、育っているのを感じている。同時に彼らがそれを大切に育てていると主張もしている。同曲が育っていく姿を見届けることができることに安堵を抱くとともに期待が沸く。



さらに「ROSIE DUB」だろう。同バージョンはプロデューサー、井出靖のイベントなどで度々、披露されているが、この日の生々しさは特別なものがある。この日のライブのサウンドエンジニアを務めた「ONE DROP」のオーナー、花香竜也がその場でリアルなダブミックスをしている。いわば同曲はアカネ&トントンマクートと花香竜也とのコラボレーションである。花香は自らのバンドなどでダブミキサーとして活動してきた経験もある。ライブハウスの出演者と会場のサウンドエンジニアとの同時進行、同時代的なアプローチ、コラボレーションはそうあるものではないだろう。「ONE DROP」でなければ実現しなかった試みである。


実は、そのエフェクトはサウンドだけではない。当日、会場の上手の壁に大型スクリーンにライブの模様が同時上映されているが、同映像にサプライズな映像が仕込まれ、ところどころで飛び出してくる。バーカウンターにいる方がタイミングを見て(ドリンクなどのおかわりがないところで)、手動でスイッチングしているのだ。最初は機械で映像が自動的に流れるのかと思っていたが、完全に人力と聞いて驚く。何度目かに気付いて、それを意識して見ると音と映像のコラボレーションがいかにも「ONE DROP」。どこかに彼ららしい反骨精神をセンスとユーモアに包む。こんなライブハウス、そうあるものではないだろう。



この日、メンバーは車で福岡へ戻らなければならない。終演後、マスターを囲み、話は尽きないが、車に乗る前に数分だけ、時間を貰い、撮影しなければならないものがあった。それは「ONE DROP」のネオンサインをバックにメンバーが佇む光景である。店の隣の駐車場から同店のネオンが美しく光る。メンバーに駐車場へ来ていただくと、茜が“朝、青い龍を見て、そして夜に赤い龍を見るなんて”と、驚く。


何か、この旅は“龍”や“竜”に導かれているかのようだ。こじつけめくが、「ONE DROP」のオーナーは花香竜也。その名前に“竜”が入っている。さらにこじつけると、「ONE DROP」から数分のところに熊本ラーメンの名店「熊本らーめん 健軍白龍」がある。



急いでシャッターを切る。何とか、納めることができた。実はそのフレーミングは2022年8月に同じく終演後、同所を後にする際に撮影している。イーライ・アンド・デヴィアンツの同所でのライブ後だった。穴井仁吉は骨折のため、同ライブは不参加になり、そこにはいなかった。本来であれば下山とともに穴井がいなければならなかった。2年越しで、下山も穴井もいる写真を撮ることができた。漸く2022年と2024年が繋がる。



メンバーは激しく雨が降り出した高速を一路、熊本から福岡を目指す。線状降水帯(筋肉少女帯ではない!?)。ところどろで雨が激しく降り、ところどころで雨が止み、静かになる。最後の最後に天龍のいたずらか。数時間後、メンバーは無事に賑やかな福岡の街へ帰ってきた。


7月1日(月)、彼らは東京へ3日間の素敵な思い出と経験を胸に帰る。天候は不安定。ちゃんと飛行機は飛んでくれるのか。そんな心配もあったが、祈りが通じたのか。飛行機は東の空へ龍のような軌跡を描いて飛び立って行った――。




熊本「ONE DROP」

2024年6月30日(日)熊本ONE DROP SETLIST


第一部

1 LIKE A HARRICANE(下山Vo)

2 からかわないで(延原Vo)

3 GOT FEEL SO GOOD(穴井Vo)

4 TEMPTATION(茜Vo)

5 CHEVROLET(下山Vo)

6 ROLLIN’&TUMBLIN’(延原Vo)

7 La la means I love you(茜Vo)

8  VIOLENT LOVE(穴井Vo)

9 GIMMIE SHELTER(延原Vo)

10  SO LONG(下山淳)


第二部

1 神様お願い(延原Vo)

2 ボントンルーレ(下山Vo)

3 オイラ、今まで(穴井Vo)

4 OH! BABY(茜Vo)

5 Brother Loui(延原Vo)

6 SHAKIN’ ALL OVER(穴井Vo)

7 ONLY YOU(穴井Vo)

8 DON’T TAKE MY SUNSHINE(茜Vo)

9 MIDNIGHT RAMBLER(延原Vo)

10 DO THE BOOGIE(下山&延原Vo)


EC1 ROSIE DUB(延原Vo)

EC2 キャデラック(延原Vo)

EC3 HARVEST MOON(下山Vo)


“アカネ&トントンマクート SUMMER FEELING!”



6/28(金) 福岡 bar Bassic.


“アカネ&トントンマクート SUMMER FEELING!”

open/19:00 start/19:30

adv/4,500(+1D) door/5,000(+1D)



6/29(土) 大村 ミュージックバーTORI-K


“クシマ音楽社presents「アカネ&トントンマクート」”

“アカネ&トントンマクート SUMMER FEELING!”

open/18:00 start/19:00

adv/6,000(+order)


6/30(日) 熊本 ONE DROP


“アカネ&トントンマクート SUMMER FEELING!”

open/18:30 start/19:30

adv/4,500(+1D) door/5,000(+1D)

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