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FUKUOKA BEAT REVOLUTION

1980年12月のTHE MODS――クリスマスの“軌跡”

いろいろあった2020年、クリスマス直前の12月23日、THE MODSの森山達也から素敵なクリスマス・プレゼントが届いた。森山達也、35年ぶりのソロ・アルバム『ROLLIN’ OVER』である。T.Moriyammer名義でリリースされた同作、KOZZY IWAKAWA(ザ・マックショウ、ザ・コルツ)と「ROCKSVILLE STUDIO ONE」に籠り、作り上げたゴキゲンなロック・アルバムだ。渋いルーツロックをベースにしながら、甘酸っぱいポップさがたくさん詰め込まれている。聞いていると、この時代を生き抜く勇気と元気が沸く、そんなアルバムだろう。森山は“明日のため、いまできることをする”というアティテュードを貫く。こんな時代だけど、2021年に希望を繋ぐことができるのではないだろうか。是非、聞いて欲しい。そして、来るべき2021年、記念すべき“40周年”にはリアルな場所で再会したいものだ。



実はクリスマスとTHE MODSというと、必ず、思いだす光景がある。それは40年前に遡る。ご存知のように彼らはあるレコード会社と仮契約し、デモテープを制作するものの、それは彼らが思い望むものではなかった。その過程の中、「TWO PUNKS」や「WATCH YOU STEP」が生まれたことは誰もが知っていることだろう。私自身も出来たばかりのデモテープを彼らから聞かされ、いわゆるアーティスト写真ももらったが、それはTHE MODSではなかった。確かに彼らにはどんなポップ・バンドにも負けないポップさがあるが、それのみを際立たせるのはTHE MODSらしくない。お揃いの黒のレザーパンツに白いYシャツにネクタイなんていうのも彼ららしくない。森山は“グループサウンズじゃないんだ”と憤っていた。その後、運命のいたずらか、彼らは最初に契約する事務所とレコード会社に出会い、契約することになる。そして1981年1月7日に上京することが決まった。


その直前、1980年12月19日、THEMODSは東京・水道橋「後楽園ホール」にいた。後に彼らを応援する新宿のディスコ「ツバキハウス」の“クリスマス・パーティ”に出演している。実はその日が彼らにとって、東京での初ステージだった。それも告知なども一切、されず、シークレットでの出演。当然、同所に来ていた観客はTHE MODSのことなど、誰も知らない。ステージに彼らが登場し、数曲を演奏すると、それまでダンスフロアで流行りのディスコミュージックで踊っていた観客が一斉に踊りをやめ、フロアから後ずさり、遠巻きになる。ステージ前にはごくわずかなキッズ達が踊るのみ。だが、THE MODSの速いビートに彼らや彼女らは戸惑うばかり。そんな光景を目の当たりにしたら、演奏する方も挫け、歌や演奏に力など入らないものだが、彼らはTHE MODSであり続けた。目の前の観客の先にいるこれから出会うであろうキッズ達へ向けて、歌い、演奏する。その姿に神々しいものを感じていた。少しほろ苦い東京デビューかもしれないが、私には彼らの意気地を潔し、同時に立ち居振る舞いを天晴と感じた。THE MODSは大丈夫だと、改めて確信を抱いた夜でもあった。


森山は当時を振り返り、“NO REACTION”だったそのクリスマス・ライブについて、こう語っている。

「最悪だったね、はっきり言って。客に対しても、東京という街に対してもコンチクショウという気持ちがあったよ。だけど、俺たちはいずれデビューしてシーンに殴り込む気持ちがあったから、絶対に手を抜いたりしないで、とにかくベストを尽くした。それで博多へ帰って、もう一度、気分を引き締め直したんだ。こういうビートはまだ受けない時代なのかもしれないけど、やるしかない、と」(『エンゼル・ウィズ・スカーフェイス』1991年刊行<宝島社>より)


その5年後、1985年にロバート・ゼメキス監督の映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が公開されるが、その映画の中、1955年のダンスパーティで主人公のマーティ・マクフライ(マイケル・J・フォックス)が1958年に発表されたチャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」を演奏している。そのパーティの観客はハイスピードかつ、ハイボルテージ(映画ではジミ・ヘンドリックスやヴァン・ヘイレン張りに演奏もしている)なサウンドに呆気に取られてしまう。演奏後、そんな観客にマーティは「君たちには まだ早い」と語りかける。そんなシーンも思い出したりもする。


ツバキハウスの“クリスマス・パーティ”では、後にTHE MODSと深い関わりを持つことになる音楽評論家、DJの大貫憲章と出会っている。その日から彼らの友情物語は続いていく。



THE MODSがデビューする1981年の彼らについては改めて語るが、THE MODSのどんな状況にあっても “不退転”であるという決意は40年前もいまも変わらない。森山達也のソロ・アルバム『ROLLIN’ OVER』に収録された「ライトを照らせ」の中には“明日への切符は まだこの手の中”という歌詞があった――。




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