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  • 執筆者の写真Nobuya Horiuchi

苣木寛之と武藤昭平――ANGELS WITH SCARFACE 30年目の邂逅「"鳴り続ける!vol.01"」

THE MODSの苣木寛之と、勝手にしやがれの武藤昭平――彼らが共演するイベント"鳴り続ける!vol.01"が昨2023年12月18日(月)に東京·下北沢「CLUB Que」で開催された。報告が遅くなってしまったが、実は同イベントに関連するイベントも今月、3月30日(土)に控えている。そんなタイミングを計っていた(!?)。意外な組み合わせの二人、そもそも彼らの出会いは、随分前に遡る。ライブのなかでも彼らは度々、その“馴れ初め”を語っている。


LIVE PHOTO by 朋-tomo-



ともに福岡生まれ、福岡育ち。現在、苣木が63歳、武藤が55歳(ライブ時点は54歳だった)。10歳近い年齢差がある。メジャーデビュー前(THE MODSは1981年、THE 100-Sの前身、The Shamは1988年にデビュー)、福岡時代に密な交流があったかは、不確かだが、やはり濃密な交流は「SCARFACE」からだろう。


1991年4月、森山達也はTHE MODSのデビュー10周年を迎え、“バンドブーム”といわれながらも自らが恰好良いと思うバンドがデビューできない現状を打破するため、エピックソニーを離れ、新たなる活動の場として「SCARFACE RECORDS」を設立している。森山は、英国のSTIFFレーベルなどの活動を想い描き、同1991年12月にレーベルのオムニバスアルバム『SCARFACES』のリリース(同レーベルからの第一弾は1991年6月にリリースされたTHE MODSのアルバム『叛~REBEL』になる)、1992年5月には 川崎クラブチッタを皮切りに名古屋ボトムライン、大阪アムホール、福岡ビブレホールの4ヶ所を、JACK KNIFE、KAZUYA、THE 100-S、THE COLTSとともにツアー『SCARFACE NITE TOUR 1992』を行っている(5月5日の川崎CLUB CITTA公演後、“SCARFACE”のメンバーは5月21日に大型バスに乗り込み、東京を出発、同日に名古屋ボトムライン、翌22日に大阪amホール、そして24日に福岡ビブレホールと回った)。武藤昭平はその「SCARFACE」に所属していたTHE 100-Sのドラマーだったのだ。


ライブDVD3枚組『THE MODS Triple Footage in SCARFACE Years』(徳間ジャパン)とTHE MODS10周年記念単行本『ANGEL WITH SCARFACE』(JICC出版局宝島編集部)。SCARFACE時代のライブ映像作品<『REVENGE』(1991.09.25)、『SCARFACES DRIVE~ギャング達の行進』(1992.09.25)、『SHADOW~SCARFACE NITE 1993 HIBIYA LIVE』(1997.05.21) ※3枚とも日付はオリジナルリリース日>を1パッケージに収めた3枚組DVD。2016年に発売された。単行本には文中のSCARFACELABEL所属バンドの全員集合写真が掲載されている。同写真を撮影したのは表紙を含め、当時のライブやツアー(『市街戦ツアー』など)に同行している山田崇博。全員集合写真は旧汐留駅跡地(前!)で撮影され、彼はスタッフに肩ぐるまをしてもらい撮影したことを覚えているという。 (集合写真) 『ANGEL WITH SCARFACE』(JICC出版局宝島編集部)より。PHOTO by 山田崇博 Takahiro Yamada




1991年10月にTHE MODSの“デビュー10周年”と“SCARFACE設立”を記念する単行本『ANGEL WITH SCARFACE』(JICC出版局宝島編集部)が発売されている。実は同書の編集に関わっていた。それゆえ、「SCARFACE」の“現場”には度々、立ち会っている。同書の中にTHE MODSを始め、同レコードの所属バンドの“全員集合写真”が掲載されている。勿論、その場にもいた。おそらく、初めての集合写真だったと思うが、撮影したのは1991年の初夏だった。記憶は曖昧だが、暑い日だったことは身体が覚えている。撮影場所は旧汐留駅跡地(現在は汐留シオサイトになっている)。当初は跡地内(塀はあるものの、当時は出入りが自由に出来た)で撮影を予定していたが、怪しい風体(!?)の男達が許可もなく、大挙して“侵入”したことで怪しまれ、跡地ではなく、跡地の塀をバックに集合写真を撮影せざるを得なくなった。いまとなっては貴重な写真ではないだろうか。当然、そこには苣木も武藤もいた。



また、前述の過酷なバスツアー「SCARFACE NITE TOUR 1992」にもカメラマンの菊池茂夫とともに同乗している。大阪からの合流だったが、過密なスケジュールでのバス移動、そしてハードなライブに明け暮れ、さらに個性の強い連中が一堂に会するため、一触即発的な状態になってもおかしくないところもあったが、不思議と楽しく、和やかなバス旅行だったことを覚えている。修学旅行や社員旅行のような和気藹々とは違うかもしれないが、何か、旅を共にすることで、絆が深まっていくという感じだろうか。“仲間”が文字通り、“仲間”になっていく――そのツアーの模様は同1992年9月にリリースされたビデオ『SCARFACES DRIVE~ギャング達の行進』に収録されている。同ビデオは2004年にDVDとして再発売。さらに2016年にはSCARFACE時代のライブなどをパッケージしたDVD3枚組『THE MODS Triple Footage in SCARFACE Years』に再収録されている。そのDVDを見れば、32年前の若き日の苣木と武藤に出会える。


『THE MODS Triple Footage in SCARFACE Years』のライナーノーツの中で、森山達也は「俺じゃなくても、誰かが扉を叩かないと次の景色が見えない。その景色を見たくて飛び込んだ…」と「SCARFACE」設立の動機を語る。そして「最初から負け戦だったかもしれないけど、確かに何かは残ったと思っている」と振り返った。わずか、4年ほどの活動だったが、“何かは残った”という言葉に異論を挟むものはいないだろう。仲間達は幸いなことに活動の形は違うものの、自らの場所を見つけ、独立独歩の活動をしている。ちゃんと、“サバイバル”しているのだ。




すっかり前置きが長くなってしまったが、2023年12月18日(月)、会場の下北沢「CLUB Que」には、たくさんの観客が詰めかける。息苦しいくらいの“3密”状態である。幸いなことにイベントは規制や制約もなく、無事に開催される。このイベント、苣木のクレジットが“DUDE TONE”ではなく、“苣木寛之”になっている。苣木寛之と武藤昭平のツーマン。イベントそのものは「CLUB Que」が仕切ったものらしいが、魅力的なラインナップである。まずは武藤昭平がステージに登場する。


彼は“大変、お世話になった先輩とのライブです”と、恐縮気味に語る。彼としてもTHE MODSの苣木寛之とのライブは特別なものがあるのだろう。




そんな緊張の中で始まった。1曲目は「ゴッドファーザー~愛のテーマ~」。“GANG ROCKER”達にはアンセムのような曲だろう。アコースティックギターを巧みに操り、観客の心のスクリーンにドラマを映しだす。


「般若心経」や「 百足~ムカデ~」、「ギネスの泡と共に」(踊ろうマチルダのカバー)など、本2024年2月29日にリリースされることになる武藤昭平、14年ぶりのソロアルバム『名前を失くした男』からの新曲を織り交ぜながら、「フィラメント」や「ザ·ムーンレイカー」など、勝手にしやがれのナンバー、「凡人讃歌」など、武藤昭平with ウエノコウジの定番曲を披露する。


武藤のギターはただ、弾き語るものだけでなく、そのボディは打楽器として、情熱の音色に躍動を加える。クラシカルでフォーキーな響きだけでなく、フラメンコやマリアッチなど、ボーダレスな音も紡いでみせる。


実に堂々とした立ち居振る舞いだ。勝手にしやがれとしての活動だけでなく、ギターを携え、全国を駆け回る武藤にとっては、こういうライブはお手のものだろう。ある意味、アコースティツク・ライブに関しては武藤が苣木以上に手慣れ、その活動歴も長いかもしれない。


武藤自身、大病を経験している。コロナ禍もあり、一時、完全に活動を休止していた時期もあったが、いまはそれを克服。休止以前にもまして、精力的に活動している。人生、山あり、谷あり、人生いろいろだ。そんな軌跡はTHE MODSの歩みにも似ている。しかし、彼らは決して諦めない、不退転の精神は福岡出身のロッカー達の通奏低音にある。


武藤のセクションはザ·クラッシュの「 London Calling」で締める。同曲については説明不用だろう。まさにアンセムというべきもので、彼らのアティテュードはTHE MODSなど、日本のパンクス達に絶大な影響を与えている。この「CLUB Que」のブッキングを担当している元ピールアウトの高橋浩司は最近、自ら収集したザ·クラッシュのコレクションを紹介した単行本『ぼくはザ·クラッシュが好きすぎて世界中からアイテムを集めました。』(高橋浩司·著、 DONUT<秋元美乃乃/森内淳>·編集)を上梓したばかり。不思議な縁ではないだろうか。




15分ほどの休憩後、苣木のセクションが始まる。意外なのは苣木が“今日は自分にとって初めてのイベントです”と、何度も言ったこと。THE MODSとして多くのイベントを自ら主催、また、招待され、参加したイベントも少なくない。しかし、DUDE TONE、もしくは苣木寛之としてイベントに出演するのは初めてになるという。確かにバンド、ソロに関わらず、イベントへの出演は思い浮かばない。後輩や仲間のバンドのライブにゲストとして出演するということはあったかもしれないが、彼が単独でこのような形での出演は初めてなのだろう。苣木が少し緊張して見えるのは、そんなことがあったからかもしれない。


苣木のセクションはいつもの通り、「BACK ROOM」や「嘘発見器」、「LITTLE BLUE」など、DUDE TONEのお馴染みのナンバー、「ダンダン」や「KISS KISS」、「LIVING DEAD」、「ONE BOY」など、THE MODSの隠れた名曲、そして「親不孝通りを抜け」や「TRAIN RIDE HOME」など、“新曲”を披露している。「親不孝通りを抜け」は、2021年にリリースされたDUDE TONEのアルバム『VOICE』に収録されている。苣木寛之と梶浦雅弘の“TWO PUNKS”と言うべきナンバーで、プロデビュー前の博多時代、当時の“日常”を歌っている。そして「TRAIN RIDE HOME」は、昨2023年9月のDUDE TONEの『LIVE2023“Walkin’ Blues”Vol.8』でも披露されナンバーたが、まだ、音源化されていない新曲でもある。同曲は“電車に乗って、家へ帰ろう”という、極めて“日常”的な風景が歌われる。





苣木も“弾き語り”(アコースティック・ライブ)を始め、6年近くなり、ステージのフロントに立ち、その歌や演奏も板についてきた。堂々としたものがある。彼自身、度々、発言しているが、弾き語りをして、全国を回る契機はDUDE TONEの盟友である花田裕之の“流れ”だった。この日も初めて“流れ”を見た時の驚きを語っている。実は彼の初“流れ”は、この下北沢のライブハウスだったという。


そこで見た風景や体験に大きな衝撃を受けたそうだ。そこには観客も花田も極めて、自然体に振る舞い、生活の延長線上の日常があったという。観客は普段着で、時にはその音の気持ち良さに寝息をあげるものもいたらしい。それはTHE MODSのライブとは対極にあるものだ。観客は普段着ではなく、いつも以上におしゃれして、決めてくる。着飾っている。晴れ(ハレ)と褻(ケ)でいえば晴れ。非日常である。また、観客は寝息をかくことなどはできず、目は見開き、思い切り前のめりになっている。どちらが良くて、どちらかが悪いというわけではない。そんなライブがあるということを知る。その体験は苣木をいろんな世界を見る端緒になり、様々な視野や視点を手中にして、創作や活動を拡げることに繋がる。そんなことをあからさまに、気負うことなく、言葉にする。改めて、苣木が正直で誠実な人間であることを再確認させてくれる。そのステージには熱狂もあるが、それだけでなく、心と身体を温かくしてくれるものがある。


苣木のセクションが終わると、アンコールを求める歓声と拍手が会場を包む。それに促されるように苣木と武藤の二人がステージに帰って来る。会場の誰もが期待している光景がそこにはあった。



この日、お互いがお世話になり、時には助けられたこともあったと語っている。具体的な内容は、その場にいた方のみのお楽しみとさせていただくが、印象に残ったのはとんこつラーメン談義である。博多に帰って、どこのラーメンを食べにいくかだ。二人とも新しい店ではなく、昔からあるとんこつの匂いが店内に充満するようなオーソドックスなとんこつラーメンを出す店が好きらしい。やはり、基本に忠実。原点回帰である。流石、福岡生まれ、福岡育ちだ。


二人がギターを抱え、演奏し、歌いだしたのは「Got My Mojo Working」。マディ―・ウォーターズやゴールデンカップスで知られるブルースの名曲である。めんたいロックを愛するものの“愛唱歌”、こんな“定番曲”を披露するところが彼ららしい。


そして、次に披露したのは武藤が歌いたいと、熱望したというTHE MODSの「LOOSE GAME」である。“10年後のTWO PUNKS”とでもいうべき同曲は、THE MODSのSCARFACE設立第一弾『叛~REBEL』(1991年)に収録されている。「LOOSE GAME」には、こんな歌詞があるのだ。


“いくつも夜を乗り越え いくつも夢が削られ 俺は仕方なく やって来たんじゃないぜ 俺は望んで ここへここへ来たのさ このROCKという名のLOOSE GAMEに”


彼らがして来たことは決して“負け戦”などではない。何かが変わり、何かが続いている。それは豊穣な地下水脈となり、ロックという大地を肥沃なものにしていく。THE MODSを愛する者の心に刻まれたナンバーではないだろうか。ヒットチャートにランクインしたとか、SNSなどで発見され、話題になったとかいう類の曲ではないが、その曲に一度でも心と身体を射抜かれたものは忘れない。一時の熱狂や興奮だけでなく、しっかりと刻み込まれているのだ。だからこそ、この日の共演が実現し、3月30日の競演も可能になるのではないだろうか。


意図したものか、意図したものではないのか――それはわからない。この日の締めくくりが「LOOSE GAME」であったこと、それは偶然ではなく、必然だろうと言わせてもらう。それに異論を挟むものはいないはずだ。


この日、来ていた観客の中で「SCARFACE」時代のことを知っているものがどれだけいるかわからないが、「LOOSE GAME」を初めて聞くものでもその世界観を共有できたのではないだろうか。何故か、30年前の風景が浮んでは消える。月日を経ても変わらないものがある。いずれにしろ、その思いは“BROKEN KIDS”達の中に生き続ける。苣木寛之の初のイベントは“汚れた顔の天使たち”の30年目の邂逅だった。




そして、3月30日 (土)には東京·代官山「UNIT」で『THE MODSを止めるな!~Roulette Ball~』が開催される。一昨年11月に突発性難聴と診断されたことを発表した森山達也。そのため、THE MODSは活動休止状態が続いているが、森山を慕い、敬う仲間達が集まり、森山の回復と復帰を願い、THE MODSのナンバーやレパートリーを歌い継ぐ。 この日は森山の68回目のバースデイでもある。そのライブは彼への最高のバースデイプレゼントになるはずだ。



北里晃一·苣木寛之·佐々木周(THE MODS)のほか、Kozzy Iwakawa(THE COLTS·THE MACKSHOW)、増子直純(怒髪天)、武藤昭平(勝手にしやがれ)、たちばなテツヤ(sparks go go)、TAISEI(SA)、高木克(SOUL FLOWERUNION)、甲田”ヤングコーン”伸太郎(BLOODEST SAXOPHONE)、AKIRA (Luv-Enders)、Yama-Chang(THE COLTS)などが出演。


かつてTHE MODSとともに夢を分け合い、肩をかり、背中をかした“GOOD FELLOWS”達の競演。ともに祝い、ともに祈ろうではないか。彼はきっと、約束の地へ帰って来る。




"鳴り続ける!vol.01"

2023.12.18(月)

下北沢CLUB Que

出演:苣木寛之(THE MODS)·武藤昭平(勝手にしやがれ)


【武藤昭平】

1. ゴッドファーザー~愛のテーマ~

2. フィラメント(勝手にしやがれ)

3. 百足~ムカデ~(武藤昭平新曲)

4. ザ·ムーンレイカー(勝手にしやがれ)

5. 般若心経

6. リコ(武藤昭平)

7. ギネスの泡と共に(踊ろうマチルダ)

8. 凡人讃歌(武藤ウエノ)

9. ロミオ(勝手にしやがれ)

10. London Calling(ザ・クラッシュ)




【苣木寛之】

1.ダンダン

2.KISS KISS

3.SLUMBER

4.LIVING DEAD

5.ONE BOY

6.VERY VERY SLOW

7.LITTLE BLUE

8.BACK ROOM

9.TRAIN RIDE HOME

10.嘘発見器

11.親不孝通りを抜け

12.明日への切符


【セッション】

Got My Mojo Working

LOOSE GAME




THE MODSを止めるな!~Roulette Ball~

2024.3.30(土) 代官山UNiT

タイトル:

THE MODSを止めるな!~Roulette Ball~


ARTIST:

北里晃一·苣木寛之·佐々木周(THE MODS)


GUEST ARTIST:

Kozzy Iwakawa (THE COLTS·THE MACKSHOW) / 増子直純 (怒髪天) / 武藤昭平 (勝手にしやがれ) / たちばなテツヤ (sparks go go) / TAISEI (SA) / 高木克 (SOUL FLOWER UNION) / 甲田“ヤングコーン”伸太郎 (BLOODEST SAXOPHONE) / AKIRA (Luv-Enders) / Yama-Chang (THE COLTS)






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