• FUKUOKA BEAT REVOLUTION

穴山淳吉”里帰りツアー” 『SPRING HAS COME TOUR.』報告! 福岡の熱い3日間

更新日:4月24日

伝説との邂逅――福岡ビート革命進行中 DAY1



既に福岡発のビートミュージックの応援サイト『福岡BEAT革命』のFBページでは簡単に紹介しているが、この2022年3月17日(木)・18日(金)に福岡、19日(土)に小倉で行われた穴山淳吉の“里帰りツアー”(正式名称は『SPRING HAS COME TOUR.』。いわゆる凱旋公演である)の模様を改めて報告しておく。時間の関係で、FBページやツイッターなどでは紹介できなかったエピソードや写真も盛り込む。初めての方も何度もの方も少し長い文章になるが、ご覧になっていただけると嬉しい。


そもそも今回のツアーの契機だが、これは穴井の発案だという。3月17日(木)は穴山淳吉の福岡初ライブと同時に、その日、誕生日を迎え、60歳になる福岡在住のギタリスト、エンジニアの松永浩の還暦を祝う“松永浩12×5 years BIRTHDAY”も兼ねている。松永は福岡のレコーディングスタジオ「HEART STRINGS STUDIO」(同スタジオではサンハウスのレコードデビュー40周年記念盤『HAKATA』がレコーディングされている)のオーナー。また、シーナと鮎川誠の自伝的ドラマ『You May Dream』(NHK福岡ドラマ)で鮎川誠役を演じた福山翔大にギター演奏を指導している。山善&鬼平BANDで活躍。「花井善平」(花田裕之+穴井仁吉+山部“YAMAZEN”善次郎+坂田”鬼平”伸一)のサポートでもギターを弾いた。

穴井と松永の縁起はツアー直前のインタビューでも公開しているが、再度、説明しておく。松永は福岡の音楽祭などで数々の賞を受賞している才能あるミュージシャンで、彼自身、上京して、プロを目指していたが、うまくいかなかった。同時期に穴井は、ルースターズは解散、ウィラードに加入している。その期間はいつも彼と一緒だったという。穴井はウィラードの後、福岡へ戻ることになるが、同時に松永も福岡に戻ってきている。丁度、音楽業界のバブルが弾けた後で、いろいろ大変な時期だったらしい。そんな時に力になって支えてくれのが松永だという。松永が還暦を迎えるにあたって、彼のために何か、やりたい。それで福岡でライブをしようと。ステージでも言っていたが、松永はルースターズのファンで、そのステージを何度も見ている。ならば、そのルースターズの下山を福岡へ連れてき、一緒にステージに立つということを“プレゼント”したかったそうだ。穴井は下山に相談したところ、下山は快諾。今回の福岡行きが実現。どうせ、やるなら福岡だけでなく、小倉もってなったそうだ。いわば、松永への感謝と恩返しが契機といっていいだろう。

会場の「Public bar Bassic.」は、元HEAT WAVE、現BLUES ONE NIGHTS、Shinya Oe And Mothers Sunshinのベーシスト、渡辺圭一がオーナー。福岡の中心、天神の親不孝通りにある。ライブハウスやバーなどが入居するビルの5階。配信などで店内を見た方も多いと思うが、ステージ後ろにクリスマスのようなネットライトが配され、ミラーボールやカラーライトが彩る。思いの他、広いところで、同フロアのメゾネットスペースが楽屋になっている。バーカウンターも大きく、インテリアも落ち着いていて、寛げる。ライブハウスというより、大人のバーと言う雰囲気である。

開演時間は7時30分。福岡は3月6日に「まん延防止等重点措置」が解除された。ただし、3月7日から4月7日までの1か月間を「感染再拡大防止対策期間」となっている。会場はソーシャルディスタンスを考慮し、多少、客席の間隔が空けられているが、立ち見も出るという盛況ぶり。地元のヒーローの帰還をいまか、いまかと待ちわびる。開演時間を5分ほど過ぎ、下山淳と穴井仁吉がステージに登場。「穴山淳吉」の福岡での初公演、お披露目だ。

二人は拍手と歓声で迎えられる。下山が1999年にリリースしたソロアルバム『Living on the borderland』に収録された「長い道」からステージが始まる。下山のギターと歌、穴井のベースとコーラスという“最小催行人数”ながら音の厚みも歌の過不足もない。直截に聞くものを高揚させていく。穴山淳吉の世界が展開される。3曲目のブルースナンバー「I‘m a king bee」で会場がさらに熱くなる。

続いて、『Living on the borderland』から「宮殿の大浴場」、「Shallow me」が披露される。「宮殿~」はリズムボックス(シーケンサー!?)を駆使し、スパニッシュでエスニックなリズム、トリッキーなサウンドデザインの中、下山のギターが自由に泳ぐ。そして、穴井が「松永くん、おめでとう」と告げ、第一部、最後のナンバー「Shallow me」で締める。

第2部は10分ほどの休憩(換気タイム!?)をして、始まる。下山と穴井が登場し、穴井は今回の経緯を改めて語る。前述通り、松永は穴井がルースターズの解散を経て、ウィラードに参加した時期に東京にいた。音楽活動だけでなく、バイトなども一緒にしていたという。また、共通の趣味であるバイクを通して、交流もしている。事故で死にかけたこともあったそうだ。

穴井にとって、松永の存在は支えになり、常に背中を押してくれる。そんな盟友が還暦を迎える。彼のために何かをしたい。それを祝うためにこのイベントを開いたという。彼への感謝と恩返しでもある。穴井は松永を呼び出す。

彼は照れながらステージに上がり、ギターを抱える。下山は松永のリクエストで、穴井が参加したルースターズ(Z)のアルバム『FOUR PIECES』(1988年)から「鉄橋の下で」(作詞:PANTA・作曲:下山淳)を演奏することを告げる。3人のセッションが始まる。下山がギターを弾き始めると、2人は呼応していく。穴山淳吉+松永浩で音に厚みが加わる。

続く、トッド・ラングレンの「I SAW THE LIGHT」では下山のヴォーカルに松永がコーラスを被せる。松永は福岡にあってもビートミュージックだけでなく、ポップミュージックを愛するミュージシャンでもある。彼が加わることで、穴山淳吉のポップス偏差値が上がっていく。

『FOUR PIECES』に収録された花田作詞・作曲の「LADY COOL」を松永が歌う。これは穴井のリクエストである。穴井がベースのルートを支え、下山がギターで松永の歌を彩る。同曲に続き、下山の「Living on the borderland」が披露される。穴井がベースで扇動し、下山がエフェクターで音に変化を加え、その演奏がアグレッシブになる。松永のソロもフィーチャーされる。誕生日の主役は松永浩。穴山淳吉も引き立て役を喜んでかって出る。


同曲の後、穴井がサンハウスの伝説のドラマー、坂田“鬼平”紳一を呼び出す。穴井とは柴山“菊”俊之のエレクトリックマッド、山善&鬼平BANDで活動を共にしている。松永は坂田のサポートもしていて、暫く音楽業界を離れていた彼のバックアップをするとともに彼が活動する際にはサポートしているという。坂田はステージに上がるなり、「浩、還暦、おめでとう。まさか、還暦を祝うとは思っていなかった」と、語る。

穴山淳吉に松永、そして坂田が加わる。そして、穴井がハープとヴォーカルを務め、サンハウスの「すけこまし」をオリジナルドラマーの演奏で披露する。穴井がヴォーカルやハープをすることは珍しいが、荒々しく、凄味ある歌と演奏は聞きものだ。続けて、下山が同じく、サンハウスの「あて名のない手紙」を披露する。


そして、新たなゲストとして、元THE GODZILLA、現KING BEEの伝説のヴォーカリスト、大場由文が登場する。彼は当日、急遽、呼び出される形で出演が決まった。彼も下山や穴井、松永のためならば、何があっても駆け付けなければならない。坂田がドラムを叩くというのなら、なおさらのこと。けばいルックスとダークなヴォーカルは菊を彷彿させる。福岡発のビートミュージックの申し子のようなヴォーカリストだ。歌う曲はサンハウスの「ふっとひと息」である。同曲に続き、大場はサンハウスの名曲「ビールスカプセル」を福岡マナーで歌い、聞かせ、会場は熱狂の坩堝と化す。

さらに坂田に代わり、元THE MODS、現BLUES ONE NIGHTS、Shinya Oe And Mothers Sunshineの梶浦雅弘が加わる。坂田、梶浦という福岡を代表するレジェンド・ドラマーが彼らをバックアップしていく。アンコールとして「I Saw Her Standing There」と「Do The Boogie」を畳みかける。

松永はこのメンバーでこれらの曲を演奏できることを心から喜んでいるようだ。そして、曲を終えると、松永は″ルースターズもモッズもロッカーズもサンハウスもいる″と声を詰まらせ、感極まる。絢爛豪華な出演陣が卓越した演奏力と歌唱力で珠玉の名曲を披露する。伝説のミュージシャンの揃い踏み。福岡の音楽の底力を示す。その金看板は伊達ではないが、昔の名前で出ていますとは無縁である。いまの音、2022年のサウンドを鳴らし、その歌声は世代を超えて届く。そうじゃなければ、意味がない。

松永は仲間と観客にお礼と感謝を伝える。そしてとっておきの曲と言うポール・マッカートニーのソロ・デビュー・アルバム『マッカートニー』(1970年)に収録されたナンバー「JUNK」を披露する。このメンバーの中で、自らの拘りを貫き通す、いかにも福岡のミュージシャンらしい。


(写真左から)穴井仁吉、梶浦雅弘、松永浩、下山淳、坂田“鬼平”紳一、大場由文

会場にはビートルズの「バースディ」が流れ、会場のスタッフがバースディケーキを持って出てくる。お決まりだが、皆の温かい拍手と歓声、そしてバースディソングに包まれ、ケーキの蝋燭を吹き消す。彼にとっても彼を愛するものにも最高の還暦祝いになったのではないだろうか。同時にそこには変わらぬ友情があった。そして、それは現在進行形である。そのことを証明することになったのが穴山淳吉の初の福岡公演ではないだろうか。福岡のビートの革命“FUKUOKA BEAT REVOLUTION” は続いていく。

純度100%の穴山淳吉――失われたコードを求めて DAY2


17日に続き、3月18日(金)に福岡「public bar Bassic」で開催された穴山淳吉”里帰りツアー”の2日目。初日はサンハウスの坂田”鬼平”紳一、The Blues One Nightsの梶浦雅弘、元THE GODZILLA、現KING BEEの大場由文など、豪華ゲストの出演による、穴井の盟友、松永浩の還暦を祝う盛大なパーティだった。この日は昨日とは趣を変え、ゲストなし。下山淳と穴井仁吉という2人だけの純度100%の穴山淳吉だ。昨日はホストに徹した感もあったが、この日ばかりはミュージシャンとしての彼らを見せてくれる(勿論、昨日がミュージシャンらしくなかったわけではない)。

下山淳と穴井仁吉という2人きりのユニットだが、人数が少なければ少ないなりに見せ方、聞かせ方を知っている。大所帯の宴の後の寂しさみたいなものはない、少ない音数で、グルーブを作り、ビートを刻んでいく。その音に心も身体もウキウキしてくる。

二人の波長も合いまくりで、ボケとつっこみのバランスも絶妙、聞いているものを、笑顔にしてくれる。音楽界のM-1チャンピョンか。下山は穴井のことをウマが合うといっていたが、遠慮や迎合をせずとも阿吽の呼吸で、話の掛け合いだけでなく、その音を高いところへ持っていく。毎回、聞くたびに新しい発見もある。下山やルースターズのオリジナルやカヴァーなどが穴山淳吉のものに仕上がってきている。二人によって、オリジナルに新たな魅力が加わる。

人数が少ないからといって、音数が少ないかというと、そうではない。下山がエフェクターなどを駆使し、アコースティックギターで弾いたフレーズをループさせ、そのバックにエレキギターで音を重ねていく。穴井もいつにも増して、躍動的で野生的な音で、厚みを加えつつ、いい意味での音の間隙を突いていく。

じっくりと彼らの演奏を見ていると、ただのエンターティンメントに留まらず、数多の実験と冒険をしていることに気づくだろう。下山はトッド・ラングレンやフランク・ザッパの信奉者として、つとに高明だが、彼らからの意識的、無意識的な影響を感じないわけにはいかない。ただ、ビートを紡ぐだけでなく、そこに捩れや捻りなど、一手間かけることも忘れないのだ。穴井は下山の音楽を”変態でポップ”と評していたが、それも聞き入っていけば、なるほどと頷くはず。

昨日の祝宴は金看板を背負う猛者たちによって、福岡の音楽絵巻を繰り広げ、その歴史と伝統をまざまざと見せつけることになったが、福岡産の音楽の底力や魅力はそこだけではない。例え、多くの方に知られてなくても愛され、歌い継がれて、聴き続けられる歌がある。

その日、下山はフルノイズのナンバーで、彼がプロデュースした南浩二のアルバム『GLITTER』でもカヴァーした「わからなくなる世の中 (原題 : わからない世の中)」を披露している。いわゆる、福岡の有名曲だけではなく、隠れた名曲も改めて発掘するという強い意思と同時に、いまは亡き南への深い思いが感じられた。

実は同曲を演奏する際に穴井は入りを間違えている。これは彼の練習不足ではなく、「わからなくなる世の中 (原題 : わからない世の中)」は、セットリストでは「You won't be my friend」(2016 年にリリースされたジプシーズのアルバム『ROCK'N'ROLL GYPSIES Ⅳ』に収録)の次に演奏することになっていた。下山が1曲飛ばしてしまったのだ。彼にしては珍しい勘違いだが、1曲も早く同曲を聞かせたかったからかもしれない。そんな間違いもすぐに修正され、二人は同曲の世界に入っていく。

こじつけになるが、この日、ピンクフロイドの「クレイジー・ダイアモンド(Shine On You Crazy Diamond)」もカヴァーされた。それも無関係ではないはず。”あなたがここにいてほしい”思いに通じるものがあるのではないだろうか。

「わからなくなる世の中 (原題 : わからない世の中)」は、まさに先行き不安、行先不明のいまという時代に改めて真価を問われるべき歌だろう。福岡の音楽シーンの奥深さを知ることになる。福岡には独自の文化と歴史が育まれ、それを多くの方が普通のこととして受け止めている。

その日、ホテルへ帰るとRKBで華丸の『先生! 染まりんしゃったね…。』(「東京にいても、心は福岡」福岡をこよなく愛する博多華丸が、東京から“福岡愛”をお届けします!番組では東京に“染まっていない”と自負する華丸が「福岡から上京して染まってしまった…芸能人や一般人を調査する」)という番組をやっていたが、同番組で普通にルースターズの「ロージー」やシナロケの「レモンティー」がかかっていて、驚いた。流石、博多である。さっきまで穴山淳吉のライブだったが、この偶然も博多なら必然となるだろう。翌日、同番組について呟いたら“毎週、シナロケ、ルースターズ、モッズが流れてます”というレスがついていた。福岡と福岡発のビートミュージックとの繋がり、強い絆みたいなものを再確認する。

君の友達――“ルースターズ(Z)の集い” DAY3






3月19日(土)に小倉のライブハウス「LiveBar『本陣』KOKURA」で開催された穴山淳吉”里帰りツアー”。同日をもって、下山淳と穴井仁吉の”感謝と恩返しの3日間”は無事に終了した。この日も、また、小さな奇跡が起こる。そして、その友情物語はいまも継続されていることを知る。


福岡から小倉へは、穴井が運転し、下山が同乗するワンボックスカーで向かう。運転するのはマネージャーではなく、ローディーでもなく、自らが車を駆って会場を目指す。おそらく、彼らのアマチュア時代、福岡から近郊都市や近県などへの遠征は、そんなスタイルでしてきたのだろう。アマチュア時代に戻ろうとしているわけではないが、そんな普通のことを普通にしようとしている。このコロナ禍で、予定は立てにくく、特に”プロジェクト”や”仕掛け”なども難しい。先が見えないからこそ、他人任せにするのではなく、自分のことは自分でする――パンク、ニューウエイブの時代の自主独立や自立自存の精神がいまもどこかに宿っているのではないだろうか。

その日、福岡を昼の2時過ぎに出て、高速に乗ったらしい。幸いなことに連休の渋滞に巻き込まれず、運転時間は2時間ほど、4時過ぎには小倉へ到着したという。彼らはライブハウスに入る前に小倉の百貨店「井筒屋」に展示されていたスーパーカーの前で記念写真を撮っている。どこか、浮かれて、楽し気な二人の画像がSNSに公開されたのは4時過ぎのことだった。運転を含め、このツアーを思い切り、楽しんでいることが伝わる。


この日のオープニングアクトを務めた小倉のライブハウス「本陣」が推すシンガーソングライター、陸王。

会場の「LiveBar『本陣』KOKURA」は小倉の繁華街の中心にある。華やかで艶やかながら怪しく、危ない雰囲気の場所にひっそりと佇む。元々、イベンターとして活動していた北九州響団の活動拠点として、また、交流の場として、2015年12月にオープンしている。北九州響団は高塔山のフェスなどにも関わっている。『本陣』にはジャンルレスでメジャーからアマチュアまで、幅広いアーティストが出演している。会場には花田裕之の”流れ”やフルノイズなどのポスターも貼られていた。


この日は、オープニングアクトがあった。陸王というシンガーソングライターで、ギターで弾き語る。同所から15分ほどのところに住むという地元の若者だ。本陣がいま、推しているアーティストだという。いい意味で若さを剥き出しした歌ながら最後にCCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)の「雨を見たかい」を英語と日本語でカヴァーするなど、いいところを突いてきた。戦争状態にある、このご時勢を考えれば、それを歌う若いシンガーソングライターがいるのは頼もしい限り。

陸王の演奏後、15分ほどして、穴山淳吉がステージに登場する。昨日に続き、二人きりである。”九州ツアー最後の日なので、楽しんでいってください”という下山の挨拶から「長い道」が始まる。偶然かもしれないが、ハイウェイを飛ばし、約束の地へ辿り着き、そして、歌い、演奏する。同時に彼らの長いキャリアを合わせれば、その終わりのない、長い道はいまもこれからも続いていく。サイケデリックでフォークロアな音が彼らの旅を彩る。

「鉄橋の下で」や「OLD GUITAR」など、お馴染みのナンバーの後、穴井仁吉トークショー「転校の勧め」(!?)が始まる。実は穴井は幼少期に小倉に住んでいたという。その間、4回も転校したそうだ。おそらく、小倉出身の方にしか、わからないような地名や場所などがどんどん出てくる。会場で頷き、賛同するものも多い。恐るべき地元率の高さ。また、父との井筒屋の思い出、迷子になって怒られたことなど、エピソードが湯水のごとく出てくる。この日、運指していて、滑らなくなり、指の油が切れたといっていたのとは大違いだ(笑)。

ちなみに下山は転校したことはなく、転校に憧れがあったという。転校したかったそうだ。いつも同じメンツと顔を合わせていると飽きてしまう。顔だけでもいいから日替わりになってほしいと、無茶振りする。

そして、下山は福岡出身のあるバンドと、この北九州出身でルースターズとも関わりのあるミュージシャンの話をする。昨日も披露したが、下山はフルノイズの名曲「わからなくなる世の中 (原題 : わからない世の中)」を、彼がプロデュースした南浩二のアルバム『GLITTER』でカヴァーしている。南は大江も花田も井上も池畑も在籍した人間クラブのヴォーカリストで、同バンド解散後もバンドやソロで活躍。1990年、先の『GLITTER』でメジャーデビューしているが、その後、活動を休止した。2001年にロックンロールジプシーズのライブにゲスト出演し、復活するも2010年に49歳の若さで急逝している。

ある意味、彼も北九州の伝説のミュージシャンである。下山は南に”ソロアルバムを作りっちゃいんや”(正しい発音は不明。誰か、こっそり修正してください)と、言われ、彼をプロデュースになることになったそうだ。彼もお亡くなりになってと、軽口を叩くが、その裏には10年以上、経っても惜別の悲しみを漂わす。


同曲を披露した後、北九州在住で、会場へ来ていた灘友正幸が呼び出される。いうまでもなく、ルースターズの二代目のドラマーで、それ以前、高校時代に南とともにとバンド「G・10(自慰獣)」銃を結成している。

灘友は高塔山でのイベント「LOVE ROCK FESTIVAL」を開催するなど、故郷、北九州を盛り上げるべく、力を入れ、動いていたが、病魔が度々、襲い、入院、手術を繰り返していた。彼が来ることは下山や穴井に連絡は行っていたそうだが、いつまた、再発するかはわからない、元気だというが、無理はして欲しくないという気持ちもあったのではないか。灘友は下山に最近、罹患し、手術したことをいじられながらもスティックを持つと別人、ルースターズのビートを叩き出し、「ラストソウル」を演奏し終えると、ステージから去っていく。ルーズターズ(S)とルースターズ(Z)を繋ぐメンバーが穴山淳吉に加わる。まさに奇跡のような瞬間ではないだろうか。

いろんな意味で思いが込められたピンクフロイドの「クレイジー・ダイアモンド(Shine On You Crazy Diamond)」が披露される。会いたい気持ちが彼らを走らす。松永浩を始め、会いたい人が地元で待っている。

穴山淳吉はインターバルを取ることなく、そのまま演奏を続ける。加速度を増すという感じだろうか。また、二人の掛け合いも勢いづいていく。下山は穴井の昨日のステージでのいちご大福を食べるモグモグタイムに驚き、呆れる。こんなミュージシャンはいない(当たり前か!?)。穴井無双の前では、讒言は馬耳東風かもしれない。

「Living on the borderland」や「曼陀羅」、「Shallow me」など、この日のハイライトでもいうべきナンバーを畳み掛ける。大団円を迎え、”また、会いましょう”という言葉を残し、ステージから消える。観客の止むことない暖かで熱気が籠る拍手にステージへ呼び戻される。

アンコールでは、また、灘友が登場する。いじめっ子の面目躍如、下山にさんざん、病気いじりをされるが、言葉はきつくともそこに深い愛がある。ああ、病気になっちゃって、なんて口に出しながらも心の中では元気になれよーと、思い切り叫んでいる。当たり前だが、ただのいじめっ子ではない。新たに結成された(!?)、謎のプロジェクト”SOKEIBU”の活動、再演も気になるところだが、穴山淳吉+灘友正幸の「Do the boogie」は痛快だった。澱んだ世界に光明をもたらすような迫力があった。この奇跡のセッション、目の当たりにできた方は僥倖ではないだろうか。

(写真左から)穴井仁吉、灘友正幸、下山淳

この3日間、下山と穴井は長時間の演奏をものともせず、終演後も残ったミュージシャンや関係者と語り合う。話の半分はとるに足りない与太話かもしれないが、そんな中から何か、新しいものも生まれることもある。

ただ、最終日だけは朝までコースは無理。また、運転して、福岡へ帰らなければならない。駐車場まで行き、帰りの途に着く彼らを見送った。彼らの顔は満足げに微笑み、何かを掴んだかのようでもあった。

いまだに続くコロナ禍、あまりに唐突なロシアのウクライナ侵攻、そしてツアーの前日、3月16日の夜には福島県沖でマグニチュード7.4の地震が起き、宮城。福島で震度6強の地震を記録、さらにツアー中、18日の夜にも岩手県沖でマグニチュード5.6の地震があり、岩手県野田村で震度5強の揺れを観測している。揺れ動き、わからなくなる世の中、会いたい人に会い行き、酒を酌み交わし(二人ともノンアルコール)、ともに語り合う。考えてみれば、誰もがこれを我慢して、2年間を過ごしてきた。今後の状況はわからないが、自ら動くことで、突破口になったのではないだろうか。

里帰りツアーは“SPRING HAS COME TOUR.”とタイトルされたが、この期間は生憎、寒の戻り、春めいていた週前半とは異なり、週後半は5度ほど、気温が下がり、冬のように寒く、冷たい雨が降り続いた。しかし、彼らの中には春風が吹き抜け、既に満開の桜が咲く。福岡、小倉を巡り、旧友と再会する3日間のツアーは、そんな旅だったのではないだろうか。



彼らを見送りながら、ジェームス・テイラーの「You’ve Got a Friend」が空耳で聞こえてきた。落ち込んだ時、僕の名前を呼んでくれれば、君に会いにいくよ――穴山淳吉の次の旅、また、すぐに始まりそうだ。







【穴山淳吉】

4/1(金)横浜 THE CLUB SENSATION

出演:うじきタケシ(うじきつよし(Vo.g)+澄田健(Vo.g)/穴山淳吉

OPEN 18:30/START 19:00

前売¥4,000/当日¥4,500(+2ドリンク¥1200)

問・予約:THE CLUB SENSATION 045-241-3166

https://sensation-jp.com/ticket-book/



【アカネ&トントンマクート】

5/22(日)所沢MOJO

出演:茜(Dr)/下山淳(Vo、g)/穴井仁吉(B)/延原達治(Vo、g)

開場17:00/開演18:00

予約4500円/当日5000円

1D別500円

〈予約・お問合わせ〉

所沢MOJO

埼玉県所沢市南住吉1-13

TEL 04-2923-3323

toiawase@mojo-m.com

http://mojo-m.com



【Eli and The Deviants】

5/29(日)下北沢CLUB Que

出演:Eli and The Deviants

G、Vo:下山淳(ROCK'N'ROLL GYPSIES),

B:穴井仁吉(TH eROCKERS)、G:ヤマジカズヒデ(dip),

Dr:KAZI(ZZZoo)、Vo:武田康男(蜘蛛蜥蜴/ex.HYSTERIC SUZIES)]

OPEN 18:00/START 18:30

前売¥4500/当日¥5000(+1ドリンク別途)

・Que店頭

・LivePocket

https://t.livepocket.jp/e/que20220529

問:CLUB Que 03-3412-9979

http://www.ukproject.com/que/


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