• FUKUOKA BEAT REVOLUTION

偉大なる復活祭――『亀戸ハードコア10周忌-KAMEIDO HARDCORE 10 YEARS AFTER-』

亀戸HARDCORE、かつて東京・江東区亀戸にあったライブハウスである。その“10周忌”を祝うイベント『亀戸ハードコア10周忌-KAMEIDO HARDCORE 10 YEARS AFTER-』がこの10月16日(日)、東京・世田谷区下北沢のライブハウス「シャングリラ」で行われた。開店10周年のイベントならわかるが、閉店10周年のイベントなど、前代未聞だろう。亀戸HARDCOREは、2007年9月1日に開店、2013年1月31日に閉店している。ハードコア・パンクやパンク・ロックなどの聖地として、遠藤ミチロウ、THE STAR CLUB、the 原爆オナニーズ、COBRA、AUTO-MOD……など、数多のバンドが出演している。2009年5月9日に放送された『出没!アド街ック天国』の亀戸特集では第24位にランクイン、“亀戸唯一のライブハウス。パンクフリークの間では知らない人は居ないとまでいわれるスポットです”と紹介されている。



この“10周忌”に駆け付けたのは、

WATCH OUT

[ニックン (Vo.)穴井仁吉 (Ba.) シズヲ (Gt.) イノウエヒロミチ (Gt.) 須藤俊明 (Dr.)]


THE RUDEBOYS

[ 玉井政司 (Ba.Vo.) 山本大治郎 (Gt.) 辻本幸生 (Dr.)]


PIRATE LOVE

[ 鶴川仁美 (Gt.Vo.) 大島治彦 (Dr.) 玉井政司 (Ba.)]


鮎川誠 (Gt. Vo.)

LUCY MIRROR (Vo.)

ヤマジカズヒデ (Gt.)

細海魚 (Key.)

穴井仁吉 (Ba.)

吉村由加 (Dr.)

松山クミコ (Vo.)

澄田健 (Gt.)

DJ : MACKY RAMONE

Guest DJ : 伊勢田勇人

という錚々たる顔ぶれ。いずれも亀戸HARDCORE所縁のミュージシャンである。福岡色が濃厚である。なかでも穴井は、かつてMOSQUITO SPIRALやMOTO-PSYCHO R&R SERVICEなどで同所に出演するだけでなく、MOTO-PSYCHO R&R SERVICEは亀戸HARDCOREのレーベルからマキシシングル「2001-A Space Odyssey」を2010年にリリースしている。同曲は同所で録音されている。

2019年1月26・27日に同じ下北沢の同じ場所(当時は下北沢「GARDEN」だった)で開催された穴井仁吉の“還暦”を祝うバースデーライブ『MAXIMUM DOWN PICKER 12×5 Years Old Birthday』でも活躍したMACKY RAMONEのDJで、爆音が流れる中、開演時間の4時を10分ほど過ぎて、“5時間”のビッグイベントが始まった。


まずは関西出身、1981年に結成されたBEAT ROCK BAND、THE RUDEBOYSが爆音で会場を揺らす。関西人らしいユーモアを交えつつもその音は轟音で身体に圧力をかけ、健康被害直前と、容赦しない。ハードコアな音の絨毯爆撃、まさに洗礼である。


この段階で、既に耳がキーンとしてくる。同バンドの玉井は、Respect up-beatでも活躍している大島治彦とともにそのまま、元TH eROCKERSの鶴川仁美率いるPIRATE LOVEのバッキングを務める。鶴川のロッカーとしての佇まいは往時と変わらず、ギターを持ち、そこに立っているだけで華がある。勿論、ギターを奏で、歌うと、その妖しい魅力は倍増していく。「Pipeline」や「Chinese Rocks」、「Born To Lose」など、ジョニー・サンダーズづくしにバトルロッカーズの「セルナンバー8」と、いいとこ取りである。ちなみにこの日のゲストDJの伊勢田勇人は言うまでもないが、映画『爆裂都市 BURST CITY』のバトルロッカーズでパンク死土を演じていた。鶴川仁美は同じくバトルロッカーズのミラクル賀仁悪を演じている。


続く穴井仁吉のセッションであるSONIC FLOWS ROCK-SETではヤマジカズヒデ、細海魚が参加、ドラムスは吉村由加と須藤俊明というツインドラムである。同セットではシーナ&ロケッツのキーボードや舞台、映画などでも活躍し、昨2021年3月29日に亡くなった野島健太郎を偲び、彼に縁ある松山クミコがゲスト・ヴォーカルとして加わる。彼女が在籍していた劇団の音楽監督を野島健太郎がやっていたという。10数年前に亀戸HARDCOREから日産キャラバンを借りて、野島、松山、穴井、そしてドラムスの松川敬一というラインナップで、福岡・博多でテレビ番組のためのホールイベントと西新のライブハウス「JA-JA」のライブイベントを2本演った後、福岡には泊まらずにそのまま東京へ戻るという、なかなか過酷なツアーをやっている。


ヤマジに代わり、澄田健が加わる。「2001-S pace Oddity」(MOTO-PSYCHO R&R SERVICE)や「Albatoross」(フリートウッド・マック)、「ROCKABILLY BOOGIE」(ジョニー・バーネット、ロバート・ゴードン)など、軽快に飛ばす。澄田らしいパフォーマンスである。澄田とヤマジのギターバトルを見たいと思った方もいるかもしれないが、細海のキーボードもあるため、ギター2本では音が多過ぎるので、ギターは1本ずつになったという。単なるオールスターキャストによる安易な競演ではなく、実に音楽的な理由でメンバーがセレクションされている。二人の夢の競演は、またの機会を楽しみに待つことにしよう。


同セッションの後には鮎川誠が登場し、お馴染み「ホラ吹きイナズマ」(チバユウスケと中村達也、KenKen、そしてヤマジが2012年に公開された豊田利晃監督の映画『I'M FLASH!』の主題歌「I'M FLASH」として同曲を録音している。ヤマジのリクエストである)を演奏し、そしてLUCY MIRRORを呼び込み、「STIFF LIPS」を演奏する。穴井仁吉スペシャルバンドとのセッションが始まる。「I Wanna Be Your Dog」(ザ・ストゥージズ)、そして「たいくつな世界」、「HELP ME」というシナロケのナンバーを畳みかける。

鮎川誠はMCで先日、9月28日に亡くなった“親友”で“盟友”である松本康(ジュークレコード、ジュークジョイント)について語る。その言葉からは彼への思いが溢れる。そして、その松本が作詞したシーナ&ロケッツの「ワンナイト・スタンド」と「恋のムーンライトダンス」を演奏する。松本へのトリビュートセッションになる。

シーナ&ロケッツと亀戸HARDCOREの縁は亀戸HARDCOREが2011年7月10日に東京・新木場の格闘技イベントスペース「1stRING」を舞台に開催した『SHINKIBA ROCK FESTIVAL 2011』に出演したことだと言う。同フェスには、SHEENA & THE ROKKETSを始め、dip、MOSQUITO SPIRALリアクション ザ ブッダ、THE MONSTERS、THE SNEAKERS、ROCK'N'ROLL GYPSIES、THE RUDEBOYS、THE RYDERSなどが出演している。



鮎川誠は今回のタイムテーブルやセッションなどのスクリプトを穴井が書いたことを告げる。実にちゃんとしたものだったと絶賛する。実はこのイベント『亀戸ハードコア10周忌-KAMEIDO HARDCORE 10 YEARS AFTER-』を取りまとめたのは穴井仁吉だ。奥ゆかしさゆえか、そんなことをおくびにも出さず、黙って嬉々としてベースを弾いているだけだが、そんな穴井を少しでもクローズアップさせたいという鮎川の感謝と心配りを感じさせる。

彼らは「You May Dream」を歌い終えると、メンバーはステージから消える。これで、この日のイベントは終わりではない。この日は亀戸HARDCOREの店主であるニックンのバンド、WATCH OUTが控えている。ニックン、シズヲ、イノウエというメンバーに穴井も加わる。彼らは凶器準備集合罪的な轟音を掻き鳴らす。流石、ハードコア・パンクである。その音が聞くものの心と身体を蹂躙していく。抉られる感じだろうか。彼らのセットリストではTHE ROOSTERSの「C.M.C」がラインナップされていたが、歌詞の通りの不穏と狂騒をその歌と音に忍ばせる、と言うか、ぶち込む。そしてアンコールでは鮎川やLUCY、鶴川、澄田、大島なども加わる。ステージの上は全員集合状態である。こんな奇跡のようなセッションやシーンを見れるのは、亀戸HARDCOREというブラックホール(!?)のような空間や場所があってこそのことではないだろうか。彼らは不可能を可能にする。


「ビールス・カプセル」、「Krazy Kool Kat」、「(I Can't Get No) Satisfaction」というアンコールセッションは鮎川も嬉しそうに演奏している。“ニューイヤーロックフェス”を思い出しているのかもしれない。少しずつだが、ロックな日常が戻ろうとしている。

ニックンは“10周忌”の次は“13回忌”だと、冗談めかして言っているが、ひょっとしたらあるかもしれない。同所の無限大のパワーを思えば、それもあるのではないかと、大いなる期待を抱かせるのだ。

それまで、ここにいるメンバーが元気にロックし続けることを祈るばかりだが、やはり、このイベントは穴井仁吉がいなければありえなかった。勿論、彼だけではなく、多くの助けや支援があってこそだが、最初から最後まで、イベントを支えたのは穴井ではないだろうか。“Produced By NIKICHI ANAI”とクレジットしてもいいくらいだ。しかし、そうすることを彼は望まない。そんな慎ましいところがクラウス・フォアマンとともに最高の“A Sideman's Journey”の幸せな旅人・穴井にはある。彼の周りには人が集まり、人が繋がっていく。ご存知のように彼は骨折のため、40日間も入院をしている。病み上がりである。それにも関わらず、こんな偉業をすんなりやり遂げてしまう。そのバイタリティーは驚くべきものがある。この『亀戸ハードコア10周忌-KAMEIDO HARDCORE 10 YEARS AFTER-』は、実は亀戸HARDCOREだけでなく、穴井仁吉の復活祭でもある。私達は、この日、偉大なる復活を目の当たりにし、歴史の証人となりえたのだ。



All Photo by Shigeo Kikuchi



閲覧数:171回0件のコメント